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『ヴィレッジ』藤井道人監督が帰着した映画の原点、未来への危機感【Director’s Interview Vol.307】

『ヴィレッジ』藤井道人監督が帰着した映画の原点、未来への危機感【Director’s Interview Vol.307】

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スターサンズの代表・河村光庸さんが2022年6月11日に亡くなった。彼が最後にクランクアップを見届けた映画が、藤井道人監督の最新作『ヴィレッジ』(4月21日劇場公開)。辺境の村を舞台に、村中から蔑まれる青年・優(横浜流星)の成り上がりと転落をディープに描いた力作だ。


新聞記者』(19)『ヤクザと家族 The Family』(21)を共に創り上げた名プロデューサーに託されたバトンを、藤井監督はどのように形にしていったのか。そして、「時代に切り込む」後継者としていま何を思うのか……。脚本づくりから映画宣伝の在り方まで、じっくりと語っていただいた。


Index


映画の原点に立ち返り「人によって解釈が違う」作品を目指した



Q:映画の公開順でいうと『余命10年』(22)と『最後まで行く』(5月19日劇場公開)の間に『ヴィレッジ』が入るのが面白いですね。藤井さんの振れ幅を感じます。


藤井:『余命10年』の次ということで、大衆に向けてということだけじゃなくしっかりと映画の原点――個人がいる環境や置かれている立場によって解釈が違うものをちゃんと作りたいと思っていました。『ヴィレッジ』の次の『最後まで行く』はまた娯楽作ですしね。


河村光庸との作品というのもあるし、余白を自分の中で大事にしたくて、SYOさんにもいろいろご教示いただきながら創り上げていきました。


Q:光栄でした。ラストシーンについても色々と話しましたよね。「作家性を出し切った、観客を置き去りにするようなものが観たい」と僕が無茶を言って……。


藤井:いやいや。そういう作品の方が意外ともやもやして心に残りますよね。「これをどう紹介したらいいんだ?」とわからない感じ……映画ってそうだったよなと最近『イニシェリン島の精霊』(22)を観て感じました。観終わったあとは「あれ、これで終わりですか?」みたいに思っちゃうけど、そこから1週間引きずる。配信で観たか観てないか忘れちゃうような面白さもあるけど、映画らしさはみんな違ってみんないいはず。そういったところに帰着したいなと思っていました。



『ヴィレッジ』©️2023「ヴィレッジ」製作委員会


Q:ここからは改めて『ヴィレッジ』がどのように出来上がっていったかを伺えればと思います。初期の河村さんのアイデアには「隕石が落ちてきて表情がなくなる」みたいなものもあったと伺いました。


藤井:元々は河村さんが別の監督と横浜流星主演で進めていた企画でした。前任者との企画ではそのような話だった記憶があります。その時の企画書を読みながら「自分じゃなくてよかった」と思っていたのですが……完全にブーメランでしたね(笑)。


Q:僕が本作の企画概要をお聞きした段階では、ある村にゴミ処理施設ができることになって、住民と施設の職員の間で軋轢が起こる――みたいな話だった気がします。


藤井:そうですね。ゴミ処理施設ができるまでの話とできた後の話だったように思います。


Q:そこから藤井さんにバトンタッチされて、優の原始人バージョンがあったりと本当に何度も何度も改稿を重ねられたというわけですね。


藤井:『新聞記者』以来のスランプでしたね。でも『新聞記者』は単純に知らない世界だからめちゃくちゃ大変だったというニュアンスが強いです。『ヴィレッジ』も環境問題や能楽など、知らないことが多すぎて勉強しながら脚本を作りクランクインが近づいていく……といった感じで、久しぶりにヒステリックになりました。全然面白い脚本が書けなくて。


後半、能のことを勉強すればするほど自分の中で解釈ができてきて、「邯鄲」の演目を題材に撮ると決めてからはそっちにグッとシフトしていきました。一炊の夢の青年の転落劇にしようと決めてからは早かったです。





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