© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ジョナサン・ワン プロデューサー A24以外では成立しなかった【Director’s Interview Vol.309】
A24作品最高の興行収入、全世界で1億ドル超えの大ヒット、そしてまさかのアカデミー賞獲得まで、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が巻き起こした旋風はものすごいものがあった。奇想天外な物語を作り出したダニエルズの才能はもちろんだが、この企画に出資させ実現化に漕ぎ着けたのは、プロデューサーであるジョナサン・ワンの手腕によるものが大きい。これまでダニエルズ作品のプロデュースを務めてきたジョナサン・ワンは、映画業界に入って10年経たずしてオスカーを獲得するという快挙を成し遂げた。ジョナサン・ワンはいかにして本作を作り上げたのか。そして、クリエイティブの塊であるダニエルズの才能を一体どのようにしてビジネスに結びつけたのか。話を伺った。
Index
全く予測しなかった大ヒットとオスカー獲得
Q:ミュージックビデオ(以下MV)から映像製作のキャリアをスタートさせ、長編映画製作に軸足を移し10年経たずしてのオスカー獲得です。このスピード感は最初から想定していましたか?
ワン:いえいえ、こんなに早くオスカー作品賞を受賞できるなんて、さすがに誰も想定できないですよ(笑)。過去にアジアの方が作品賞を受賞したことはありましたが、アジア系アメリカ人が受賞したのはオスカー初だそうです。まさかそれが自分になるなんて、それも予測できなかったことですね。ダニエルズとの幸運な出会いから約12年間、努力を重ねてきた結果だと思います。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
Q:A24作品歴代最高のヒット、そしてオスカー獲得と、これらは企画の段階から想像されていたのでしょうか。
ワン:絶対にいい作品になると、最初から特別な予感はありました。ただその後どんな風に展開するかはまったく予想出来なかった。「オスカーのキャンペーンをやるよ!」と電話が掛かってきたときは、さすがに「嘘でしょ!なにバカなこと言ってんの?」という感じでしたね(笑)。アカデミー賞を受賞することだけが成功の証ではありませんが、メインストリームに受け入れられたのだという感覚はありました。インディーズ映画のファンや、自分たちの世代は気に入ってくれるだろうと思っていましたが、それ以上に拡がることは想像できなかった。でもそれを感じさせてくれたのはSXSWでのプレミア上映でした。自分たちが望んでいたエモーショナルな形で観客が反応してくれてカタルシスを感じてくれていた。クレイジーな部分だけを面白がるのではなく、親子関係に響いてくれた。これはヒット作品になるぞと、そのときから感じていました。