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『トランスフォーマー/ビースト覚醒』スティーブン・ケイプル・Jr監督 ロボットは呼吸するべきか? 【Director’s Interview Vol.338】

©2023 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, TRANSFORMERS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO.©2023 HASBRO

『トランスフォーマー/ビースト覚醒』スティーブン・ケイプル・Jr監督 ロボットは呼吸するべきか? 【Director’s Interview Vol.338】

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車種とロボットの関係、細部に込めた歴史



Q:今回は時代が1994年ということで、トランスフォームの対象に当時の車種が印象的に使われます。


ケイプル・Jr:時代はもちろんですが、トランスフォーム後のロボットのキャラクターに見合った車種を選択しています。そのフォルムが、各ロボットの性格や気性にマッチしていることが重要だからです。たとえば新登場となるミラージュは、ポルシェ911の流線型がすばしっこい性格とリンクすると考えました。また日産スカイラインGT-Rは、敵側のナイトバードに変わりますが、小回りが利いて、しなやかで美しいスカイラインの動きが、ナイトバードの俊敏さに生かされています。ただ当時のスカイラインGT-Rは現存品が見つからず、部品も残っていなかったので、映像で再現する際に最も苦労した車種かもしれません。


Q:トランスフォームするのがピカピカの新車ではないところもリアルです。


ケイプル・Jr:トランスフォーマーたちは、多くの場所で様々な闘いを生き抜いてきました。そうした過去の闘いでの傷跡も残っています。ナイトバードをじっくり観察してもらえれば、背中の部品が少し壊れていたり、いくつかのパネルが外れているのを発見できるはずです。彼らが生き抜いてきた歴史を映像で反映させるのは、このシリーズで大事な作業のひとつ。車種が決まってからキャラクターに反映させ、あるいは逆にキャラクター設定を車種に反映させるというプロセスの中で、そうした細部のこだわりも作られていくのです。



『トランスフォーマー/ビースト覚醒』©2023 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, TRANSFORMERS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO.©2023 HASBRO


Q:シリーズの前作は一応、『バンブルビー』ですが、そこからの繋がりは意識しましたか?


ケイプル・Jr:『バンブルビー』は本作の前日譚ですから当然のごとく敬意を表しています。特に本作に出てくるバンブルビーは、シリーズ初期のデザインではなく、前作『バンブルビー』のイメージを受け継ぎました。同作のトラヴィス・ナイト監督は、ロボットの感情表現を豊かにするために、それ以前の作品よりもバンブルビーの目を大きくしました。“目の演技”を重視したわけで、僕もその点は素晴らしいと感じ、今回はオプティマスプライムの目も少しだけ大きくしてみました。トランスフォーマーたちは人間ではありませんが、感情表現が求められるので、こうしたアレンジが必要だと感じたのです。


Q:本作で初登場となるマクシマルについて、その映像化の苦心やこだわりを教えてください。


ケイプル・Jr:マクシマルはアニメの「ビーストウォーズ」のファンに一定のイメージがあります。そこから大きく外れないようにしつつ、これまでの実写映画を観てきた人に違和感を与えず、なおかつ新鮮味を加えるという、プレッシャーのかかるチャレンジでした。マクシマルのリーダー、オプティマスプライマル(ゴリラのトランスフォーマー)は、「ビーストウォーズ」では高潔で威厳のあるリーダーという特徴が描かれたので、そうした「核」の部分は守ったわけです。



『トランスフォーマー/ビースト覚醒』©2023 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, TRANSFORMERS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO.©2023 HASBRO


Q:動物がロボットにトランスフォームするマクシマルは、過去の作品のパターンと明らかに異なります。


ケイプル・Jr:そうですね。動物がメカに変わる。つまり有機体が無機質な物体になるプロセスを、アニメならともかく実写で表現するのはかなり難しかったです。たとえばゴリラの状態では「毛」だった物が、金属の素材に変化するわけですから。トランスフォームする際には、元が動物であったことを主張するために、ロボットのボディの各所にスリットを入れ、そこから毛を覗かせたりもしました。動物の質感と、金属のつるっとした表面の合成には苦心が多かったのですが、自分なりにうまくできたと思っています。ただしラフカットの映像をチェックしたら、何かしっくりこない感じでした。ロボットが“生きている”と思えなかったんです。その理由は呼吸をしていなかったからで、製作陣が集まって「呼吸をさせるべきか?」「いやロボットが息をしたら逆に変だ」と大論争に発展しました(笑)。結果的に、人間のように鼻や口で呼吸させるのではなく、脇や腕に付いているポンプから油圧/水圧式で煙や空気を吐き出させることにしました。特集効果班や大道具のスタッフに総動員で協力してもらい、このシステムを取り入れたところ、単なる置物に見えたロボットに生命感が宿ったのです。




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