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『アリスとテレスのまぼろし工場』岡田麿里監督 脚本家として監督である自分に“あてる”こと【Director’s Interview Vol.357】

©新見伏製鐵保存会

『アリスとテレスのまぼろし工場』岡田麿里監督 脚本家として監督である自分に“あてる”こと【Director’s Interview Vol.357】

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思春期の少年少女たちのドラマを軸に、ダイナミックな異世界描写が展開。哲学的な問いかけもありつつ、映画的な盛り上がりも置き去りにしない。『アリスとテレスのまぼろし工場』は若者向けだけのアニメ作品では決してない。世代を超えて響く、強烈な力を持った作品に仕上がっている。


本作の監督であり脚本も手掛ける岡田麿里は、脚本家からそのキャリアをスタートさせた。作画経験を持たない岡田監督は、いかにしてこのダイナミック且つ繊細なアニメーションを作り上げたのか? 話を伺った。



『アリスとテレスのまぼろし工場』あらすじ

製鉄所の爆発事故により出口を失い、時まで止まってしまった町で暮らす14歳の正宗。いつか元に戻れるようにと、何も変えてはいけないルールができ、鬱屈とした日々を過ごしていた。ある日、気になる存在の謎めいた同級生・睦実に導かれ、製鉄所の第五高炉へと足を踏み入れる。そこにいたのは言葉の話せない、野生の狼のような少女・五実―。二人の少女との出会いは、世界の均衡が崩れるはじまりだった。止められない恋の衝動が行き着く未来とは?


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“閉ざされた場所”とコロナ禍



Q:全くのオリジナル作品ですが、思春期の少年少女のラブストーリーと閉ざされた世界という骨子はどのように思い付かれたのでしょうか。


岡田:もともとの小説は「狼少女のアリスとテレス」というタイトルでした。工場に野生的な狼少女がいて、嘘つきな狼少女が世話をしているという設定はあったものの、“時が止まった世界“という要素はまだありませんでした。ただ、自分の過去作を振り返ってみても、完全なオリジナル作の場合は、”閉塞感のある場所“という要素がどうしても出て来てしまう。自分が思春期の時に育ったのは盆地だったので、”ここから出てはいけない“と感じさせる空気があり、しかも私は学校に行っていなかった(笑)。場所と気持ちの両方が閉ざされていたことが原体験としてあるんです。オリジナルを書くときは、どうしてもそれが出てくるんですよね。


今回の“変化を禁じられる”という設定を思いついたのは、コロナ禍での緊急事態宣言が大きかったですね。世の中では変化というものが常に求められていて、よく「変わっていかなければダメだ」と言われますが、その一方で、変わらないことを無意識に求められているような空気も感じていました。そんな風に“変われ”と表向き言われている世の中が、緊急事態宣言が出たことによって、皆一斉に“変わるな”という状況に陥った。全員が同じことを言われたので、自分だけ不幸な振りも出来ないし、その状態になったときの行動の取り方も皆様々。考え方の違いが浮き彫りになることもあり、驚きも多かった。



『アリスとテレスのまぼろし工場』©新見伏製鐵保存会


変化を禁じられた世界では、足並みを揃えようとする人や以前と同じ自分にこだわる人、状況に絶望して動けなくなる人などがいて、とにかく“変化”というものに関して色々と考えさせられました。きっかけはコロナ禍でしたが、自分自身が今まで感じていたことがより分かりやすくなったんです。それで「これはちょっと書いてみたいな」と。


Q:物語の中でも“変化”に対する葛藤が描かれますが、どちらも否定されることありません。


岡田:そうですね。私は何が正しいかを断言する物語は作れない。自分があんまり正しくないからなのかもしれませんが(笑)。同じ状況下にいるキャラクターたちはどう動いていくのか?それを描ければと思いました。




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