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『THE FIRST SLAM DUNK』を貫く“そこに生きている感”。痛みを乗り越え、踏み出す一歩 ※注!ネタバレ含みます。
2022.12.17
※本記事は物語の核心に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。
『THE FIRST SLAM DUNK』あらすじ
週刊少年ジャンプに1990年42号から1996年27号まで連載された、井上雄彦氏による少年漫画「SLAM DUNK」の映画化。監督・脚本も井上自身が務めた。湘北高校バスケ部メンバーの人間的成長を描きだす。
Index
原作者が監督・脚本を務める異例の映画化
2021年1月7日、とある映画の制作が発表される。漫画家・井上雄彦氏のTwitter上で。『SLAM DUNK』新作アニメ映画化を、我々が知った瞬間だった。
『SLAM DUNK』はもはや説明不要のバスケットボール漫画。「週刊少年ジャンプ」で1990年から96年にかけて連載され、国内シリーズ累計発行部数1億2,000万部以上を記録。世界中にファンを誇り、作品を読んだことがなくとも「あきらめたらそこで試合終了ですよ…?」「バスケがしたいです……」「天才ですから」等の名ゼリフは聞いたことがあるだろう。
伝説の漫画の映像化。実写であれば『るろうに剣心』や『幽☆遊☆白書』『聖闘士星矢』、アニメでも『ピンポン』や『うる星やつら』等々、近年でも数多くの作品・企画が発表されている。ただ、『SLAM DUNK』の場合はやや様相が異なる。まずは、原作者の井上雄彦が脚本・監督を務めるということ。
原作としっかり連携をとるため、『名探偵コナン』シリーズのように二人三脚で進めたり『ONE PIECE FILM RED』等で原作者の尾田栄一郎が総合プロデューサーを務めたり、『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』で原作者の堀越耕平が原作用に温めていたアイデアを提供したりと、監修含めて様々な立場で原作者は映画と関わるもの。しかし『THE FIRST SLAM DUNK』のように本人が監督・脚本も手がけるのは、それほど多くはない。映画監督としてどんな初陣を飾るのかわからない不安と、原作者にしか作れない踏み込んだ物語への期待……ファンにおいても様々な思いが去来したのではないか。
特に『SLAM DUNK』は、原作が衝撃の幕切れをした作品であり、“続き”を望む声が非常に多い背景もある。寝耳に水の映画化発表、原作者自らが脚本となれば、「まさか原作の後日譚!?」「それとも完全オリジナル作品!?」と、どのようなストーリーが展開するのか妄想が膨らむのは必至。改めて個々の情報解禁を振り返ると
2021年1月:映画化発表
8月:井上雄彦が監督・脚本を務めることが発表。湘北高校男子バスケ部メンバーが円陣を組むビジュアルが公開
12月:こぶしを交わすティザーポスターが発表
『THE FIRST SLAM DUNK』ティザー予告
2022年7月:タイトル、特報、公開日が発表
10月:本ポスター発表
11月:湘北高校の主要メンバー5名を演じる声優陣、エンディング主題歌・劇中音楽の担当アーティストが発表。あわせて予告編が公開
『THE FIRST SLAM DUNK』予告
といった流れ。情報が更新されるに従い「桜木花道のバッシュが赤×黒のカラーリングということはインターハイ出場後=山王戦か⁉」「FIRSTということはエピソード・ゼロ? それとも桜木が初めてダンクを決めた日か⁉」「本ポスターで宮城リョータが真ん中ということは彼にフォーカスした物語か⁉ 彼の過去を描いたといわれる幻の短編『ピアス』があってだな……」と大いに盛り上がりを見せていた。
そして12月3日に劇場公開されると、公開2日間で動員84万7000人、興収12億9600万円の大ヒットを記録。公開9日間では動員202万4129人、興行収入30億3549万2950円と順調に数字を伸ばし、興行収入100億円超えが期待されている。
ちなみに2022年の興収100億超え作品は(*1)
『ONE PIECE FILM RED』186.7億円
『劇場版 呪術廻戦 0』138.0億円
『トップガン マーヴェリック』134.8億円
であり、
『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』97.8億円
『すずめの戸締まり』85.9億円 (*2)
という状況。『THE FIRST SLAM DUNK』は(言うまでもないが)これらに肩を並べる人気作品なのだ。
本稿では、本作の制作背景を追ったムック「THE FIRST SLAM DUNK re:SOURCE」(集英社)や劇場パンフレット、公式サイトに掲載された制作陣のインタビュー等を参照しつつ、作品の魅力を紐解いていきたい。なお、作品の性質上「どういう物語が展開するか」含めたネタバレ表記を含むため、ご留意いただいたうえで以降のページに進んでいただければ幸いだ。
*1:2022年12月16日時点
*2:2022年12月11日時点