1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. THE FIRST SLAM DUNK
  4. 『THE FIRST SLAM DUNK』を貫く“そこに生きている感”。痛みを乗り越え、踏み出す一歩 ※注!ネタバレ含みます。
『THE FIRST SLAM DUNK』を貫く“そこに生きている感”。痛みを乗り越え、踏み出す一歩 ※注!ネタバレ含みます。

© I.T.PLANNING,INC. © 2022 THE FIRST SLAM DUNK Film Partners

『THE FIRST SLAM DUNK』を貫く“そこに生きている感”。痛みを乗り越え、踏み出す一歩 ※注!ネタバレ含みます。

PAGES


原作の名シーンが「映像化」で劇的に



 井上が重視していた「そこに生きている感」はストーリー、そして映像にも完全にリンクしており、試合シーンの臨場感が凄まじい。縦横無尽にコート内を縫うカメラワークやシューズの音、シュートが決まった際の静寂からの観客の声援等々、映像と音響を通した空間演出が実に効いている。


 こうしたSE(サウンドエフェクト)においても、井上から「『ここのドリブルはもっと強く突いて欲しい』とか、『シュートのネットを揺らす音が欲しいけど、ここはスポッだよ』とか」といった細かな指示があったそう。なお、キャラクターのジャージやユニフォーム等、さらにゴールネットの揺れはエフェクトスーパーバイザーやシミュレーションスーパーバイザーといった専門家の手によって自動化技術等も取り入れて作り上げていったという。


 「そこに生きている感」は、単純に言うと我々観客と同じ人間として認識できるということ。その好例は、「汗」であろう。原作でも登場人物の汗の描き込みが試合の激しさを我々に「わからせる」機能を果たしているが、映像化したことで汗が「出る」「流れる」がより強く効果を発揮しており、声優陣の息遣い等が加わって「息が上がる」つらさが我々の身体感覚と重なり、「生きている感」を増幅させる。


 それによって、原作の名シーンがより劇的に進化した点は、本作の特筆すべき点のひとつ。たとえば、試合で完全にへばりながらも3ポイントシュートを外さない三井の執念、リバウンド王の異名を持つ桜木のフィジカル(跳び直しの速さと滞空時間)、ゴリラダンクの迫力、流川の天性のセンス、そしてやはり「ドリブルこそチビの生きる道なんだよ‼」と覚悟を決めた宮城の突破力などが、破壊力抜群で描かれるのはファンにとって涙を禁じえないものではないか。漫画が映像になり、“体感/体験”としてアップグレードされる感覚はアニメ化の醍醐味のひとつだが、その感度が桁違いなのだ。


 最強王者・山王のお家芸であるフルコートのゾーンディフェンスの凄さ(彼らのスタミナがいかに無尽蔵であるかが、感覚としてわかる)、国内トッププレイヤーである沢北の圧倒的強者感、20点差がもたらす意味と絶望感も引き立っており、だからこそ安西先生の「私だけかね…? まだ勝てると思ってるのは…」からの「あきらめたらそこで試合終了ですよ…?」にこもった言葉の力も増大。“動”の試合中(アクション)にフラッシュバックする“静”の過去(ドラマ)というメリハリも絶妙で、両者が絶妙に絡み合い、感動をどこまでも底上げしていく。


 『SLAM DUNK』から『THE FIRST SLAM DUNK』へ――。「そこに生きている感」をあらゆる面で追求した本家本元による完璧な“解答”でありつつ、漫画と映画が互いに補完し合う最強のチームメイトがここに誕生した。



文:SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema




『THE FIRST SLAM DUNK』を今すぐ予約する↓





作品情報を見る



© I.T.PLANNING,INC. © 2022 THE FIRST SLAM DUNK Film Partners

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. THE FIRST SLAM DUNK
  4. 『THE FIRST SLAM DUNK』を貫く“そこに生きている感”。痛みを乗り越え、踏み出す一歩 ※注!ネタバレ含みます。