当然監督は続けたい
Q:監督としての手応えも感じていると思いますが、今後も監督を続けていかれる意志はありますか?
荒井:意思はあるけど、体力が…。この間手術して入院していましたが、夜全然眠れなくて…。「ここで死んじゃうと授賞式に出らんねぇなぁ…」とか「来年のあの映画撮れねぇな」とかね。「先生、お願いしますよ」って感じでした。ICUに入っていると眠れないですね。それで死んだ先輩たちのことを考えました。藤田(敏八)さん、65歳だった。神代(辰巳)さん、67歳だった。それに比べりゃ俺は随分長生きしているじゃないかと。深作(欣二)さん、72歳。笠原(和夫)さん、75歳。それよりもまだ生きているっていう(笑)。そろそろ死んじゃうのかなぁと思ったりね。でも退院して出て来ると、ハードな取材スケジュールを組まれていました。病み上がりなのに(笑)。
神代さんは50過ぎのときに『赫い髪の女』(79)をやったんですよ。そのとき言っていたのが「シナリオを書く方が体力的にしんどい」と。それで俺が登場できたと思うんです。神代さんが50過ぎてしんどくなったとき、こっちは30ちょい。それはラッキーでしたね。
手術で血栓が飛んじゃって麻痺が起きる可能性もあったから、「言語障害とか意識障害は勘弁してほしいなぁ」とか思っていましたね。新藤兼人さんみたいに車椅子だったらまだ現場には行けるなとかね。現場はいるだけで他の人がやってくれるじゃないですか。幸いちゃんと出て来ましたけど(笑)。
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監督・脚本:荒井晴彦
1947年1月26日生まれ、東京都出身。若松プロの助監督を経て、1977年、日活ロマンポルノ『新宿乱れ街 いくまで待って』(曽根中生監督)で脚本家デビュー。以降、『赫い髪の女』(79/神代辰巳監督)、『神様のくれた赤ん坊』(79/前田陽一監督)、『遠雷』(81/根岸吉太郎監督)、『キャバレー日記』(81/根岸吉太郎監督)を執筆。『Wの悲劇』(84/澤井信一郎監督)、『リボルバー』(88/藤田敏八監督)、『ヴァイブレータ』(03/廣木隆一監督)、『大鹿村騒動記』(11/阪本順治監督)、『共喰い』(13/青山真治監督)でキネマ旬報ベスト・テン脚本賞を受賞、橋本忍と並び最多受賞となる。近年の主な執筆作品に『さよなら歌舞伎町』15/廣木隆一監督)、『幼な子われらに生まれ』(17/三島有紀子監督)、『あちらにいる鬼』(22/廣木隆一監督)、『福田村事件』(23/森達也監督)などがある。97年に『身も心も』を初監督し、『この国の空』(15)、第93回キネマ旬報ベスト・テン第1位に輝いた『火口のふたり』(19)に続き、本作が監督4作目となる。
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『花腐し』
11月10日(金)テアトル新宿ほか全国公開
配給:東映ビデオ
©2023「花腐し」製作委員会