『NO 選挙, NO LIFE』は異色のライター畠山理仁(50)の姿を通して、日本の選挙の本当の面白さに迫ったドキュメンタリーだ。畠山の信条は「候補者全員への取材」。「泡沫候補」として大手メディアが取り上げない候補者にも丹念に取材を重ね、彼らの主張をすくいとる。そんな畠山の取材をさらに外側から取材する本作は、二重構造を有するまさに「異色」の選挙エンタメ映画と言えるだろう。
監督は『なぜ君は総理大臣になれないのか』(20)、『香川1区』(22)、『劇場版 センキョナンデス』(23)、『国葬の日』(23)のプロデューサー、前田亜紀。異色の選挙ドキュメンタリーの裏側を語ってもらった。
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10分のVTRが映画に発展
Q:本作は、フジテレビのドキュメンタリー枠である「NONFIX」で放送されたものを発展させたそうですね。
前田:元々はYahoo! JAPANクリエイターズプログラムの10分のミニ枠からです。そこから「NONFIX」での放送に発展して、結果映画になりました。わらしべ長者じゃないけど、作品がちょっとずつ大きく育っていった感じですね。
Q:今回は、『なぜ君は総理大臣になれないのか』(20)、『国葬の日』(23)などでタッグを組んできた大島新監督がプロデューサーです。大島さんはどんな風に関わっていたのですか?
前田:大島さんは常に私の背中を押しまくってくれました。最初、Yahoo!で公開するための10分バージョンを作るときに尺が4時間あったんです。「ヤバい」と思って削ったんですが、2時間半にするのが精いっぱいで。それを大島さんに見せたら、「これは映画にしよう」っていきなり言われました。私は「気が早いですよ」と言ったんですが、「いや、もう映画だ」ってずっと言い続けて。そんな大島さんの言葉もあって映画になったんです。
『NO 選挙, NO LIFE』(C)ネツゲン
Q:そもそも畠山さんを取材しようとしたのは何故だったのですか?
前田:畠山さんには『なぜ君は総理大臣になれないのか』の試写会で初めてご挨拶しました。それで畠山さんの書いた「黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い」という本を読んだらすごく面白かったんです。
私は『なぜ君~』の現場で政治家を中心に選挙や政治を見てきましたが、そこからは全く見えない世界が畠山さんの周りにはある。いつかこの人の肩越しにカメラを置いてみたいと思いました。実際にそれが実現するまでには2年ぐらい掛かってしまいました。選挙があるたびに、私の都合で取材に行けないことが続いたんです。でも2022年の参院選がはじまる時、「今回を逃したら国政選挙はもうしばらく無さそうだ。ここでやらないと!」と思って、カメラを回しました。