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『PERFECT DAYS』共同脚本/プロデュース:高崎卓馬 “もの作り”は手段じゃない【Director’s Interview Vol.381】

『PERFECT DAYS』共同脚本/プロデュース:高崎卓馬 “もの作り”は手段じゃない【Director’s Interview Vol.381】

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“もの作り”は手段じゃない



Q:日本人キャストで日本の生活を撮るということは、当然ヴェンダースが知らないものや分からないものがたくさん出てきます。その辺はどのように調整されたのでしょうか。


高崎:かなり濃い時間を一緒に過ごしてきたことと、僕がヴェンダースを圧倒的に尊敬しているので、おそらくかなり彼と感覚が同期していたと思います。日本的な部分は常に横にいてジャッジしました。「外国人監督のとった風変わりな日本」にはしたくないからそこは頼むと最初に言われました。多少違和感が残っているかもしれませんが、そこは僕が原因です。ここで日本人はハグをするか?しすぎじゃないか?そんな議論をよくしました。編集でも外したり、入れたりしながら。日本人っぽさを表現することよりも、登場人物たちの心の動きを、彼らのパーソナリティとして、ここはこうしよう、と判断していきました。そういう日本人がみて変に感じないようにチェックする係という特別席があったおかげで、僕はヴェンダースの映画づくりを世界中の誰よりも間近で見ることができたのはとんでもない幸運だと思います。


Q:役所広司さん以外のキャスティングはどのように決まったのでしょうか? 柄本時生さん、田中泯さん、三浦友和さん、石川さゆりさんにあがた森魚さんから長井短さんまで。かなりこだわりのキャスティングになっています。基本的には高崎さんがキャスティングされているのでしょうか。


高崎:シナリオをつくりながら、動画をみせてイメージを伝えていきました。それからキャスティングの元川さんと必死に交渉して。「柄本時生のこの顔が最高だ」って言われちゃうと、絶対にスケジュールを抑えなきゃいけない。「この男がまさに友山だ!」って言われたら、三浦友和さんに絶対OKしてもらわなきゃいけない。その板挟みになっていました(笑)。キャストの皆さん全員にお会いして依頼をしたのですが、皆さん「ヴェンダースの作品に出たい」と思ってくれているので、ずっと前向きな苦労でした。


『PERFECT DAYS』ⓒ 2023 MASTER MIND Ltd.


Q:今回かなりの手応えを感じていらっしゃると思いますが、今回の映画製作で得た「気づき」のようなものはありますか。 


高崎:正直にいうと、その手応えっていつまでも無いような気もするんです。何か目標があってやったわけではないし、いい意見もあるしそうじゃない意見もある。一番は映画を作ったことで、映画がいろんな場所に連れて行ってくれたこと。このおかげで会える人が一気に増えた。これはすごいことだなと思っています。


もう一つ学べたのは、ゴールを決めずにやっている方が楽しいということ。「映画監督になりたい」「映画を作りたい」とやっていると、それがゴールになるので、そこで頭打ちになる気がするんです。「賞を取りたい」「興行収入で稼ぎたい」ということではなく、「何かいいものを作りたい」と、自分の心の中にあるものをちゃんと踏まえて、それをアウトプットするという作業を出来るだけ純度高くやる。そこの純度が高ければ高いほど、そのアウトプットが僕をどこかに連れて行ってくれる。“もの作り”を手段にしちゃうとそこで終わっちゃう。とにかく“いいもの”を作りたい。でも、“いいもの”って何だろうと、それを考えていたい。そういう気がします。



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共同脚本/プロデュース:高崎卓馬

クリエイティブディレクター、小説家、株式会社電通グループ・グロースオフィサー、JR東日本「行くぜ、東北」など数々の広告キャンペーンを手がけ、2度のクリエイターオブザイヤーなど国内外の受賞多数。その活動領域は広く、著書に小説「オートリバース」(中央公論新社)や、海外でも評価の高い絵本「まっくろ」(講談社)、「表現の技術」(中公文庫)などがある。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:中野建太




『PERFECT DAYS』

TOHOシネマズ シャンテほか全国公開中

配給:ビターズ・エンド

ⓒ 2023 MASTER MIND Ltd.

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