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『PERFECT DAYS』共同脚本/プロデュース:高崎卓馬 “もの作り”は手段じゃない【Director’s Interview Vol.381】

『PERFECT DAYS』共同脚本/プロデュース:高崎卓馬 “もの作り”は手段じゃない【Director’s Interview Vol.381】

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ヴェンダースは映画に“ストーリー”は邪魔だと言う



Q:脚本はヴェンダース監督と高崎さんの共作ですが、具体的にどのように作られたのでしょうか。


高崎:元々は「短編映画を四つ作ろう」くらいの話だったので、ヴェンダースにベルリンに会いに行くときに、四つの短編の元になるものを持っていきました。役所さん演じる主人公は清掃している間ずっと無口で、まるで修行僧のよう。その彼が掃除している間に見る景色はたくさんあるはず。そこから作ったエピソードや彼自身の話など、現実的なものからシニカルなもの、ちょっとSFっぽいものまで、20~30じゃきかないくらいの数のエピソードを持って行きました。それをヴェンダースに見せたらほとんどのアイデアを気に入ってくれて、そこから10以上のエピソードを残して、これを全部撮ろうという話になった。もちろん短編四つには入らない数だったので、だったら映画にしようと彼が言ってくれた。


翌日、ヴェンダースが「すごくいいアイデアがある」と言い出しました。これらのエピソードを解体して1個のプロットにするのではなく、全部使って主人公の2週間にしようと。それで、月曜日に起きること、火曜日に起きること、と2人で話しながらエピソードを順番で置いていったんです。そこから各曜日の関係性を踏まえポストイットに書いて並び替えたりしながら、最終的にそれはいわゆる箱書きに近い形になっています。それを僕が日本に持ち帰り脚本にして、翻訳したものをベルリンにメールで送る。それを直して返信してくる。それを翻訳してまた直して…という作業を9月くらいまでずっとやり取りしていました。その間にもキャスティングやロケハンを同時進行で行っていたので、その情報もやり取りしながら脚本に組み込んでいった感じです。



『PERFECT DAYS』ⓒ 2023 MASTER MIND Ltd.


Q:ヴェンダース監督のインタビュー動画を見ると、平山の日々のルーティーンに「物語を加える」ことにとても慎重になっていたと話されていました。その辺のニュアンスはどのように脚本に取り入れられたのでしょうか。


高崎:ヴェンダースは元々“ストーリー”という言葉を嫌っていました。嫌いどころかやや憎んですらいる。ストーリーという作為がいかに映画を台無しにしてしまうか、よく話してくれました。商品としての映画をつくるならそれは必要かもしれないが、映画の可能性をそれは放棄することに他ならない。言い換えると作為のようなものかもしれません。作為は、カメラが捉えようとするその対象に対して、こうあってほしいと思う不遜なもので、対象に対するリスペクトのないものかもしれません。また彼は映画をつくるとき、つくりかたからつくることが理想だとも言っていました。映画をつくるたびに新しい方法から考える。それが楽しいのだと。


脚本を作っている時に「このやり方だと伏線も張れないし、サブプロットも発生しないいけど、それでもいいのか?」と聞いたら「サブプロットなんて意識するな、そんなものはこの世界に本当は存在しないものだ」と。ただ似て非なるものではあるのですが「自然な関連性」が生まれてくるのを辛抱強く待っているようでした。月曜にこういうことをしたから木曜にこんな顔をするんだといような。それをアーチと呼んでとても喜んでいました。やっぱりそれはドキュメントとフィクションをたくさん作ってきたから生まれたスタイルのような気もします。ドキュメンタリーで「もう一度こっちを向いてください」とか「今のセリフをもう1回言ってください」なんて言わない。それは本当に起こったものに対してリスペクトがあるからです。


Q:その作り方で成立させることができるのは、ヴィム・ヴェンダースならではですよね。


高崎:シナリオ通りに編集することを全く意味がないとも考えていて、ドキュメンタリーのように撮影した全素材を見直して、どう作るか、そこから何が浮かびあがるか、考えていく。今回僕らが作ったシナリオ通りに結果的になっているのですが、それでも最後の最後まであっちこっち迷いました。「自分はこういうものを作る」と決めてかかると、それ以下になってしまうと。撮影してきたものに対するリスペクトがすごく強くて、編集してじっと待つことを何度も繰り返す。まるで暗室で現像液に印画紙を入れて写真が浮かび上がるのを待っているようでした。それを伝えたら、「その表現が大好きだ」って言っていました。





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