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『PERFECT DAYS』共同脚本/プロデュース:高崎卓馬 “もの作り”は手段じゃない【Director’s Interview Vol.381】

『PERFECT DAYS』共同脚本/プロデュース:高崎卓馬 “もの作り”は手段じゃない【Director’s Interview Vol.381】

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ヴェンダースから学ぶ風景の捉え方



Q:この映画は、我々が住んでいる日本の日々の暮らしを見つめ直します。その視点はヴェンダースならではだと思いました。高崎さんはその“まなざし”の横にずっといたわけですが、実際の現場はいかがでしたか。 

 

高崎:「東京がとても美しく撮れていますね」と試写でよく言われましたが、正直言うとちょっと分からないところがあります。作る側にいるので、もう客観的に見れないんです。最初はロビー・ミューラーが撮っていた頃のヴェンダースの画が欲しくて、「どれだけかっこいいマスターショットを東京で見つけ出すんだろう?」と興味がありました。シナハンの時から「ここは刺さるんじゃないか」という場所を次々見せましたが、ことごとく無視されました。最終的には小さな画の積み重ねになりました。キーとなるロングショットを撮らなかったことが正直不安だったのですが、そういうショットが無くても、結果的にはこれまでのヴィムの映画と同じような印象を受けます。一枚画の構図が綺麗か否かだけではなく、画や色、編集のリズムを含めた映画全体の佇まいも含めて、そう見えるのでしょうか。


シナハンやロケハンで一緒に東京を回りましたが、やっぱり見る場所が違います。ずっと真横にいたので、風景をどう捉えるのか、僕自身ものすごく勉強した気がします。言葉では上手く言えないのですが、“話を撮る場所”と言いますか、ここで撮ると映画になるという感覚を教えてもらった気がします。街の見え方が変わったと思います。



『PERFECT DAYS』ⓒ 2023 MASTER MIND Ltd.


Q:平山が住んでいるアパートもとても印象的ですが、どのように見つけられたのでしょうか。


高崎:シナハンのときに、「ここに平山は住んでいる」と自分が見つけたアパートで言いだして、そのまま帰国しちゃったのですが、結局そこは借りることができなかった。そのときシナリオ作りは佳境に入っていて、アパートが決まらない状態でシナリオを作るは難しい段階。「これはヤバい」と、スタッフと一緒にアパートの候補を全部棚卸しつつ、ロケーションコーディネーターが押上や浅草を歩いて回ってくれて、あの家を見つけてくれました。資料で見ていけそうだったので、すぐに現地に行きiPhoneで撮影し、そのままベルリンに行ってヴィムに見せたんです。「ここなら良い」と言ってくれたのですが、撮影準備で9月に来日するまではヴィムがその場所を見ることができない。だから、シナハンのときに感じた自分がちゃんと答えを出せているかめちゃくちゃ不安でした。撮影のために来日して成田に着くと予定をすべて変更して「このままアパートに行く」と。ちょっと嫌な予感がしたのですが(笑)、アパートに着いたらちょっと暗い顔になって「広すぎる」と呟いた。冷や汗どころじゃなかったです。アパートを中心に平山という男の生活圏のなかで他のすべてのロケーションをみつけて、準備をして、日程を組んでいたのでここがダメだとすべてがやり直しになる。長い沈黙のあと「ここの襖を閉めれば大丈夫だ」と言って。それがあの「植木を育てる部屋」が生まれた背景です。撮影監督のフランツ・ラスティグは「引き画も最高だし、こんなに美しい構図になる場所は奇跡だ。よく見つけたね」と何度も撮影中に言っていました。映画ができあがるとあのアパートは完璧だと思います。映画をご覧になった方から、ときどき鍵をしないのか?と言われますが、あそこは押し鍵なんです。プッシュして締めると鍵がかかる。昔よくあったものですがご存じない方も結構いらっしゃるようですね。





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