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『罪と悪』齊藤勇起監督 オリジナルにこだわったデビュー作【Director’s Interview Vol.383】

『罪と悪』齊藤勇起監督 オリジナルにこだわったデビュー作【Director’s Interview Vol.383】

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デビュー作でもオリジナルにこだわる



Q:映画関連の会社だけではなく、一般企業にも出資を募って回ったと聞きました。


齊藤:そうですね。一般企業にとどまらず福井県にも相談に行きました。実際に県庁に行って議員さんの前で話もしました。自治体が出資して映画が作られるパターンとして「ご当地ムービー」みたいなものがありますが、自己満足に終わってしまって、自治体のためにはならないのではないか。自分の映画では観光地は出てきませんが、その代わり世界に通用する本格的な映画の撮影が福井県では出来る。そのことが伝わればと。映画を観てもらえれば分かりますが、廃屋を燃やすシーンがあったり、国道で車の走行シーンがあったりと、他の地域では難しい撮影が福井県では出来た。福井県が撮影に適した場所だと感じていただけると思います。それによって映画業界内で評判になり、多くの撮影隊が来るようになる。それが地域の宣伝になるんだと、福井県の皆さんの前で必死に説明しました。現に富山県などは撮影のメッカのようになっていて、僕も助監督時代に何度も行きましたし、同時期に撮影隊が2〜3つ被ったりもしていました。


僕が相談に行った時の福井県はちょうど県知事さんが変わった時期で、新しいことに挑戦しようという土壌が出来つつあった。それで皆さんも乗り気になってくれて、助成をしてもらえることになりました。そうやってアクティブに行動した一つの結果として、県の協力が得られたことはかなり大きかったと思います。



『罪と悪』©2023「罪と悪」製作委員会


Q:やっていることは完全にプロデューサーですね。


齊藤:それに近いかもしれません。だからクレジットはしませんでした。監督/脚本/編集/プロデューサーとなると、ちょっと怪しくないですか(笑)。デビュー作だからこそ、自分でここまで出来たのかなと思います。


Q:映画業界からの出資は難しかったのでしょうか。


齊藤:そうですね。プロットを見せると「いいね」とは言ってくれるのですが、じゃあ実際に撮らせてくれるのかといったら、なかなかそうはいかない。それが現実でした。デビュー作でオリジナルを撮るのは、日本映画界ではハードルが高すぎますね。CMをたくさん撮っていたような“箔”があれば可能だったかもしれませんが、僕は助監督ですから自分で監督した作品がない。誰かを頼っても時間がかかるので、自分で動くしかなかった。


今の時代に「オリジナルでデビュー作をやってみろよ!」と言ってお金を出してくれるような気概のある人は僕の周りではいませんでした。ただ、そんなリスクを負えないのも理解できます。だからそこには期待していなかったので、まずは自分でプロットを作りお金を集めに動き始めた。でもスタッフも役者もそれだけでついてきてくれた。そこは本当に感謝しています。逆にこっちが聞きたくなるんです「オリジナルのデビュー作にも関わらず、なんでこの人はここまでやってくれたんだろう」って。本当に驚きますし感謝しかありません。最終的にはプロデューサーの古賀さんが手助けしてくれましたし、こんなに嬉しいことはないですね。



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