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『ペナルティループ』荒木伸二監督 片手にSF、もう片方に社会性【Director’s Interview Vol.393】

『ペナルティループ』荒木伸二監督 片手にSF、もう片方に社会性【Director’s Interview Vol.393】

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約2年ぶりの映画出演、伊勢谷友介



Q:若葉さん、伊勢谷さんの組合せが絶妙でした。キャスティングの経緯を教えてください。


荒木:基本、アテガキはしないのですが、“岩森”という漢字が“若葉”に形が似ているように、執筆の途中から完全に若葉さんじゃなきゃと思ってました。オファーした若葉さんが乗り気になってくれて、岩森役は若葉さんに決まると、プロデューサーから溝口役として伊勢谷さんを提案されました。想定外だったし、最初は確信が無かったです。会ってみようかって話になって、もしかしたら落ち込んでブクブクに太った伊勢谷友介に会えるかもと期待していたのですが、逆に身体がメッチャ締まっているんです(笑)。皆の前でも明るく振る舞っているし、想像していたのと違っていました。しかし、そんな彼の中にも久しぶりの現場であることの、戸惑いや恐れみたいなものが感じられて、その繊細な部分をどうにか映像に落とし込めないかと考えました。休む直前に出ていた映画は大作ばかりで、分かりやすい大きな演技を要求されるものが多く、説明台詞も彼に集中していました。それも含めて、今回の手作りで比較的コンパクトな映画で求められることに最初は少し戸惑っている感じがありました。それをかなり初期から察知していた若葉さんが上手いこと伊勢谷さんを乗せてくれたことは大きいですね。若葉さんの助けで役が出来上がっていく感じでした。



『ペナルティループ』©2023『ペナルティループ』FILM PARTNERS


伊勢谷さんは絶対的なフラがあります。カメラを前にすると、すごく華がある。それに加えて、今回のことでいろいろ傷ついて様々な経験をしたことから、“深み”が出てきたんじゃないでしょうか。彼の背中がとてもいいですよね、今回。


Q:今後はどのような作品を作っていきたいですか。


荒木:またオリジナルを書きたいと思っていますが、先日ある監督と話したら「よくそんな面倒くさいことやるね」と言われました(笑)。彼曰く「自分だったら、面白い話を思いついたらそれにそっくりな話を探す。それに乗っかればいいし、そこに答えまで書いてある。思いついたことから起承転結作るのは大変でしょ」と。それを聞いてますますオリジナルで作ろうと思いましたね(笑)。でも後になって、原作モノも良いなと思うかもしれませんが(笑)。漫画はすでに絵があるからすごく難しいと思います。小説だと面白いものが出来るかもしれない。特に海外の小説なんかいいと思います。


オリジナルの場合はどこまでも自由で、歩ける場所が広い。あんなのはどうか、こんなのはどうかと、煮たり焼いたりしながら毎日考えています。3作目が出来たらまたぜひ観てください。



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監督/脚本:荒木伸二

1970年生まれ、東京都出身。東京大学教養学部表象文化論学科卒。CMプランナー、クリエイティブ・ディレクターとして数々のCM、MVを手掛ける。その傍らシナリオを本格的に学び、テレビ朝日21世紀シナリオ大賞・優秀賞、シナリオS1グランプリ・奨励賞、伊参映画祭シナリオ大賞・スタッフ賞、MBSラジオ大賞・優秀賞など受賞。17年、木下グループ新人監督賞で準グランプリを受賞したオリジナル脚本『人数の町』(20/主演:中村倫也)で長編映画デビュー。同作は新藤兼人賞の最終選考作品に選出され、モスクワ国際映画祭、バンクーバー国際映画祭で招待上映を経て、シカゴで開かれたアジアンポップアップシネマ映画祭のオープニング作品に選ばれた。本作で2作目となる長編演出に挑む。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『ペナルティループ』

新宿武蔵野館、池袋シネマ・ロサほか全国公開中

配給:キノフィルムズ

©2023『ペナルティループ』FILM PARTNERS

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