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K2 Pictures 紀伊宗之プロデューサー 「映画は儲からない」と言うのは日本人だけ【CINEMORE ACADEMY Vol.32】

K2 Pictures 紀伊宗之プロデューサー 「映画は儲からない」と言うのは日本人だけ【CINEMORE ACADEMY Vol.32】

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 “日本映画の新しい生態系をつくる”ことを目標に掲げ本格始動した株式会社K2 Pictures。創業者であり代表取締役CEOの紀伊宗之氏は、ティ・ジョイ〜東映在籍中に『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(12)『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(21)の配給や、『犬鳴村』シリーズ(19~)、『孤狼の血』シリーズ(18・21)、『初恋』(20)、『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16)、『キリエのうた』(23)、『リボルバー・リリー』(23)、『シン・仮面ライダー』(23)といった、数々の話題作やヒット作を企画・プロデュースしてきた、まさに剛腕プロデューサー。


今年5月には、日本発の映画製作ファンド「K2P Film Fund Ⅰ」を組成に向け、岩井俊二、是枝裕和、白石和彌、西川美和、三池崇史や、アニメーション制作会社・株式会社MAPPAといった世界で活躍するクリエイターと共に映画製作を進めていくことを発表。同月に開催されたカンヌ国際映画祭では記者会見を実施し、会見に集った世界中の映画関係者・メディアへ向けたプレゼンテーションを行った。


製作委員会方式が主流の日本映画界に、製作ファンドという新たなストラクチャーを立ち上げた紀伊氏。これまでの日本映画界ではあまり見ることのできなかった、大胆で早い行動に驚かされると共に、日本映画の新たなステージを予感させる動きにはワクワクさせられる。紀伊氏が目指すものとは一体何か。関西弁と笑いを交えながら、穏やかにそして雄弁に語ってくれた。


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キャリアのスタートは映画館



Q:東映ではヘッドプロデューサーとしてヒット作を生み出してきた紀伊さんですが、なぜ東映を退職してK2 Picturesを立ち上げられたのでしょうか。東映の中で同じアクションをとることは考えられなかったのでしょうか。


紀伊:東映の中では出来なかったですね。僕は東映の子会社に採用されて、広島の映画館の切符のもぎりからキャリアをスタートさせました。映画のプロデューサーになりたいと思っていましたが、出来が悪かったのでそこには行けなかった(笑)。でもいろんな幸運もありました。「◯◯東映」という場所の仕事は、普通はシネマオペレーター(映画館運営)だけなんです。お客さんが来たら、切符をもぎって、観せて、帰す。だから“小屋”なんて言われたりもしますが、それが映画館の仕事。でも当時、広島と静岡と仙台だけは、東京本社や関西支社が細かく手が届かない地域ながら、ある程度の大きさの都市だったこともあり、自分たちで宣伝までやる必要があった。でもそれがすごく良かったんです。より“映画をビジネスとして扱っている感覚”がありました。とにかく映画館に人を呼べるように、目の前のことを一生懸命やっていました。


その後、株式会社ティ・ジョイという会社に移り、「新宿バルト9」という映画館を立ち上げました。そして、劇場支配人として編成に関わっていきました。ティ・ジョイは映画館を運営する会社ではありましたが、映画の配給や製作まで携わるようになり、2012年の年間興行収入を80数億売り上げたんです。当時親会社の東映は100人前後で年間興行収入が約100億くらいで、僕らは5人前後で80数億。そうすると、当時、東映とティ・ジョイの社長は同じでしたから、社長に「お前らやりすぎや」って怒られまして(笑)。それで東映に来て映画を作れと言われ、本社のプロデューサーとして動くことになりました。


そういう意味では、映画業界の川下から川上まで何でもやってきました。日本の映画業界でもほとんどいない、特殊なキャリアだと思います。業界の中でも同じところに居続けると見えないけれど、劇場、編成、配給、制作とそれぞれ利益が相反するポジションで、視点が変わると見えてくるものがある。だから「もっとこうした方がええのに、なんで出来へんのかなと」と考えたり、提案したり、変えたり、チャレンジしてみたりしてきました。会社にも「ファンドを作りましょう」と都度言ってきましたし、「撮影所を二つも持っているんだから、安定供給を宣言してもっともっと作った方がいい。大きい会社だからそれくらいのリスクは取れるはずだし、もっと作品をポートフォリオにして考えた方が、東映という会社は生きるんです」と言い続けていました。それでもやっぱり変わらなかった。ここ30年ぐらいはある種の思考停止になっているように感じてしまいました。だから、自分が感じている日本映画業界の課題を変えていくチャレンジをしたいと思い、次に進もうと決めたんです。





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