“大根仁×Netflix”これまでありそうでなかった組合せが、どえらい作品を生み出してしまった。Netflixシリーズ「地面師たち」は、実際に起こった不動産詐欺事件をベースにしたクライム・サスペンス。「だます者」「だまされる者」のヒリつく駆け引きを、手加減・忖度一切無しで描き出す。全7話イッキ見必至の、圧倒的面白さだ。
大根監督はいかにして「地面師たち」を作り上げたのか。話を伺った。
Netflixシリーズ「地面師たち」あらすじ
再び土地価格が高騰し始めた東京。辻本拓海(綾野剛)はハリソン山中(豊川悦司)と名乗る大物不動産詐欺師グループのリーダーと出会い、「情報屋」の竹下(北村一輝)、なりすまし犯をキャスティングする「手配師」の麗子(小池栄子)、「法律屋」の後藤(ピエール瀧)らとともに、拓海は「交渉役」として不動産詐欺を働いていた。次のターゲットは過去最大の100億円不動産。地主、土地開発に焦りを見せる大手デベロッパーとの狡猾な駆け引きが繰り広げられる中、警察が地面師たちの背後に迫る。次々と明らかになる拓海の過去とハリソンの非道な手口。前代未聞の綱渡りの不正取引、迫りくる捜査......果たして100億円詐欺は成功するのか?
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意識した海外ドラマの“容赦のなさ”
Q:圧倒的に面白くて、最近の日本映画ではあまり見られなかった『マルサの女』(87)のようなスリリングな魅力に溢れていました。
大根:伊丹さんの映画は大好きだし、マルサのような知られざる世界の職業モノはやっぱり面白い。「マルサvs脱税者」という取る側と取られる側の攻防は、楽しんで観てしまう。そういう伊丹映画的な構図を、特に第一話においては意識しました。
Q:今言った伊丹十三から、デヴィッド・フィンチャー、マーティン・スコセッシなど、大根監督の好きなものを詰め込んだ感もありましたが、特にこだわりのあるものはありましたか。
大根:作るのも観るのも大好きなので、ドラマも映画もたくさん観ていますが、ここ数年でいちばん惹かれて「面白いなぁ」と思うのは、海外の連続ドラマですね。甘いシーンが一切無い、情け容赦ない雰囲気が好きなんですよね。フィンチャーで言えば『マインドハンター』(17〜19)だし、少し前だったら『メア・オブ・イーストタウン / ある殺人事件の真実』(21)とか、『チェルノブイリ』(19)のような緊張感が持続する作りは意識しました。
Netflixシリーズ「地面師たち」©新庄耕/集英社
Q:本作はNetflixシリーズのドラマですが、最初から映画ではなくドラマとして企画されたのでしょうか。
大根:最初は映画で考えていました。知り合いの映画会社のプロデューサーに持って行ったところ、「監督、これは会社的にやりづらいですね」と…。民放のテレビドラマもスポンサーの絡みがあるから、ますます可能性は少ない。でも考えてみたら、表現自由度が高いNetflixにいちばん合っているかもしれないなと。人を介して企画を持ち込んだところ、「これはウチ向きですね。ぜひ!」と即決に近い感じで決まりました。
Q:Netflixでも映画とドラマシリーズがありますが、そこでドラマにした理由はありますか。
大根:最初は2時間くらいの映画を考えていたのですが、Netflixでやるならばイッキ見できる連続モノにした方が良いだろうと。配信の大きな特性であり作り手側の利点となるのは、各話で尺が変わっても大丈夫なところ。Netflixだったら、自分が一番理想とするところで切って、次の話に繋いでいくことが可能だなと。