寄りサイズへのこだわり
Q:これまで手がけられた映画ではいつも違う撮影監督とタッグを組まれている印象があります。今回の蔦井孝洋さんは『夜明けの街で』(11)に続き2度目ですが、スタッフィングはいつもどのように決めているのでしょうか。
若松:プロデューサーが決めてくれる場合もありますが、その方が撮っている映像を見せてもらって、そのときの映画に合いそうな方にお願いしています。最近はCGが得意な人もいますし、それが必要になる場合もある。蔦井くんとはWOWOWやテレビドラマを10年ぐらい一緒にやっているので安心ですね。しかも彼は映像や画角など研究熱心ですから。
Q:初顔合わせの方とやることも多いですね。
若松:『ホワイトアウト』は山本英夫さんだし、『沈まぬ太陽』は長沼六男さん、『Fukushima 50』はフジテレビのドラマをいつも撮っている江原祥二さんにお願いしました。作品とその人の相性で決めています。
『海の沈黙』©2024 映画「海の沈黙」INUP CO.,LTD
Q:初顔合わせの場合、現場のコミュニケーションはいかがですか。
若松:僕は意外とコミュニケーションを取る方なので、どういう映像が欲しいかをしっかり伝えます。コンテも一応描きますが、実際に現場に行ってカットの取捨選択をしています。カメラマンも色々と考えてくれて「こういうのはどうですか?」と提案してくれますが、その通りに撮っていると、アングルばかりに目がいってしまう。自然に芝居を見せたいときはシンプルな映像が良い場合もあるんです。
でも本木くんからは「テレビの監督だからアップが多いんじゃないか?」と最初は心配されました。僕も映画は何本かやっているので、寄りと引きのバランスは一応考えているつもりですけどね(笑)。ずっとテレビで育ってきたので、確かに何かあると顔を見たくなるんです。そういう意味ではテレビとスクリーンの違いは、私の場合は“寄りサイズ”と考えるのが分かりやすいかもしれません。それでも完成した映画を観た本木くんは、「心配したのが間違いでした」と言ってくれましたけどね。