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『クラブゼロ』ジェシカ・ハウスナー監督 映画言語を視覚化する、“尺と視点”  【Director’s Interview Vol.455】

Ⓒ COOP99, CLUB ZERO LTD., ESSENTIAL FILMS, PARISIENNE DE PRODUCTION, PALOMA PRODUCTIONS, BRITISH BROADCASTING CORPORATION, ARTE FRANCE CINÉMA 2023

『クラブゼロ』ジェシカ・ハウスナー監督 映画言語を視覚化する、“尺と視点” 【Director’s Interview Vol.455】

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「全盛期のキューブリックを彷彿とさせる冷静な眼差し」(THE FILM VERDICT)、「毒々しいユーモアを放つ作品」(FRANCE INTER)と評価されている本作。手掛けたのは、ミヒャエル・ハネケに師事するジェシカ・ハウスナー監督だ。物議を醸すテーマ設定と鮮烈なビジュアルで知られ、これまでに本作を含めた5作の長編映画がカンヌ映画祭に選出、世界の観客を魅了し続けている。


ジェシカ・ハウスナー監督はいかにして『クラブゼロ』を作り上げたのか。話を伺った。



『クラブゼロ』あらすじ

名門校に赴任してきた栄養学の教師ノヴァク(ミア・ワシコウスカ)は【意識的な食事/conscious eating】という「少食は健康的であり、社会の束縛から自分を解放することができる」食事法を生徒たちに説く。親たちが気付き始めた頃には時すでに遅く、生徒たちはその教えにのめり込んでいき、「クラブゼロ」と呼ばれる謎のクラブに参加することになる。栄養学の教師が導くのは、幸福か、破滅か--。


Index


イデオロギーは過激化する側面がある



Q:栄養学の教師を主人公にするというアイデアはどこから来たのでしょうか。


ハウスナー:この映画の最初のアイデアは「生徒たちを操る教師」というものでした。彼女のセオリーに生徒たちはまんまと誘惑され、親が気づいたときにはもう手遅れになっている。その先生の担当を栄養学にすることは割とすぐ決まりました。現代を生きる人々は栄養に関して話すことが多く、何が健康的で何が健康的ではないのか様々な情報が混在し、中には物議を醸すような情報すら存在している。そのイデオロギーを扱うことが、この作品を現代的で面白いものにするのではないかと思いました。


Q:「ハーメルンの笛吹き男」のような寓話性が、時代を超えた教訓を感じさせます。意識されているものはありますか。


ハウスナー:寓話性と現代性の両方を描きたいと思っています。時代を超えた普遍性のようなものが物語の核にありますが、展開される舞台を現代的なものにすることで、今の私たちがどういう行動をとり、どういう考え方をしているのか、そして人間であるということはどういうことなのか、それらを描こうとしました。



『クラブゼロ』Ⓒ COOP99, CLUB ZERO LTD., ESSENTIAL FILMS, PARISIENNE DE PRODUCTION, PALOMA PRODUCTIONS, BRITISH BROADCASTING CORPORATION, ARTE FRANCE CINÉMA 2023


Q:環境破壊への行き過ぎた警鐘が描かれた部分もありますが、意図したものはありますか。


ハウスナー:もちろん意図しています。昔も今も、イデオロギーというものは過激化する側面がある。何かを信じる者がラディカルな行為に至るということは昔からあり、以前はその主な理由が宗教でした。様々なものが信じられている現代においては、たくさんのイデオロギーが存在しています。その一つが環境問題ですね。これに関しては特に感情に訴える部分があり、フラストレーションを感じて過激な行動に繋がってしまうことがよく見受けられます。興味深いのは過激化するには、みんな何かしらの理由を持っているということ。この映画を観てそれを感じて欲しいですね。


Q:教師に惑わされた生徒たちを引き戻すことは、実の親でもかなり難しいと感じました。その辺に対しての思いはありますか。


ハウスナー:面白いのは、誰もが何かを信じているということ。そう考えると、誰もがある種のカルトメンバーであり、ただ過激化していないだけ。誰かの信念が破滅的なほどに強くなり、人生を壊すほどになってしまった場合にどうなってしまうのか。それがこの映画では描かれています。なぜ過激化するのかは私には説明出来ませんし、そうなったらどうすれば良いのかという処方箋も持っていません。実際に誰かが過激化してしまうと、周囲がその人を引き戻したり説得したりすることは出来ないと思います。オープンに会話できるような場所に引き戻すのは、ほとんど不可能に近いでしょうね。




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