“怖い空気”を撮るセンス
Q：近藤監督は子供の頃からJホラーが体に染み込んでいるそうですが、「怖がる」ことから「怖がらせる」ことへ転換したきっかけがあれば教えてください。
近藤：昔から、何かを見るとそれを自分でもやりたくなるタイプでした。子供向けの怪談本を読んだら、それを人に話して怖がらせたくなるし、漫画を読んだらその漫画を書いてみたいと思う。そういうことの繰り返しだったので、自分が摂取したものを人に伝えて面白がってもらうのは自然な流れでした。
清水：クリエイターになる人はそういう人が多いですね。僕もまさにそのままでした。クラスで流行っている漫画があると、皆は読んで好きになるだけですが、僕は真似してアレンジしたくなる。「この手が効くなら、俺が思った発想の方が面白いんじゃないか？」と試したくなって、実際に作って友達の反応を見たくなっちゃう。多分、樋口真嗣さんや庵野秀明さんなども同じだと思います。作り手になる人は根っこの部分にそういうのがあるのでしょうね。
『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』©︎2024 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会
Q：清水プロデューサーは近藤監督のどのようなところにホラーの才能を見出しましたか。
清水：近藤監督自ら、今回はNO CG、NO特殊メイク、NOジャンプスケアを掲げていました。僕も同じように、ジャンプスケアや特殊メイクなど誰でも出来るところだけで勝負したくない。でも、普段はホラーなど見ないプロデューサーや映画会社の人たちからは、一般の人にわかりやすい怖さを求められることが多いんです。それも大事なのは分かるのですが、そうじゃないところで勝負したいなと。ただし、いくらホラーの造詣が深くても、そこだけ行き過ぎて誰にも伝わらないのは商業ベースではNG。ちゃんとバランスを取った上で怖い空気を撮れるかどうかが大事。何の説明もなくただ山をジト〜ッと撮っただけで、その人らしさってやっぱり出るんです。怖い空気が撮れるかどうかは、もう鍛練では成し得ない個々の性分や感性で、近藤監督は確実にその何かを持っている。
「日本ホラー映画大賞」の選考をしていると、いつも思いますね。誰かの真似だけに終わらず、人と違う何かを持っているかどうか。怖そうに撮っているだけのものはバレるんです。そこのセンスは大事だなと。作っている人が感じているものは、作品に宿りますから。
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