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『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』近藤亮太監督 × 総合プロデューサー:清水崇 “怖い空気”を撮るセンス【Director’s Interview Vol.466】

『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』近藤亮太監督 × 総合プロデューサー:清水崇 “怖い空気”を撮るセンス【Director’s Interview Vol.466】

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スムーズ過ぎて心配だった編集チェック



Q:清水さんはホラー映画の先輩として、どのようなアドバイスをされましたか。


清水:あまりしていませんね。ただ、商業映画としては何の前知識もなくたまたま入ったような不特定多数のお客さんも満足させなければならない。いや、満足して欲しいし、させたい。ホラーの好き嫌いや好みに関わらず、一般のより多くの方に響くように作るべき/とは言え、媚びる必要はない…といったスタンスで、何点か言ったかもしれません。


僕も普段は監督業が多いので、いつもはプロデューサーから「もっと派手にしてくれ」「わかりやすい怖さを入れてくれ」「有名なキャストを入れてくれ」などと色々言われるのですが(笑)、今回は自分がプロデューサーなので、逆にそれを告げなきゃいけない立場になるのは心苦しかったです。


近藤:アドバイスをいただいた中で嬉しかったのは、「小中理論*」の話になったことですね。ト書きの中に幽霊の主観について書いていたのですが、清水さんから「これは小中理論的にはタブーとされているけれども、やるのね?」という確認があって…。そんなことは普通誰からも言われませんから(笑)。


清水:ホラーに造詣が深くないと、普通はプロデューサーですら小中理論を知りませんから。あとは、僕もデビュー時に同じ事を高橋洋さんから訊かれて同じように応えていたりしたので(笑)。


近藤:そうですよね(笑)。でもそのシーンでは、幽霊の主観ショットをやった方が怖いと思ったので、「ここは幽霊の主観ショットでいきます!」と。その辺は僕が清水さんの影響を受けていることが大きいですね。それぞれの根っこにある感覚や知識は共感度が高く、とてもありがたかったです。



『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』©︎2024 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会


清水:僕は年上の人の言うことを全て信じるわけではないし、受け入れ難い…むしろ、どこかで越えたいと思ってきた。当時、「なるほど!」と小中理論に大きく頷きながらも、どこかでぶち壊したかったので、「呪怨」のビデオ版を撮った時はあえて外していました(笑)。今は自分が年上の立場が多くなったから逆に若い勢いが怖いですね(笑)。


今回は近藤監督が自分で連れてきたやりやすいスタッフで作りましたが、今後新たな領域を広げていくとしたら、もっとベテランの技術スタッフを上手く巻き込んで使えるかどうか。そこを自分のものにしていくことが出来れば、近藤ワールドはどんどん広がると思います。そこは今後の近藤監督の商業監督としての有り様でもありますね。


近藤:こんなに自由にやれることも、今後はそう無いだろうなと。今回の完成版は1回目の編集ラッシュとほとんど変わらないんです。さすがに冗長と言われるかもしれないと忖度して、前半部分を少しカットしてみたら、「もっと長くした方がいいんじゃないか?」という返事をいただき驚きました。


清水:僕も含めたプロデューサー3人はほぼ言うことは無くて、「このままでいいんじゃないか。むしろもっと長くても良いくらい」と感じていました。そんなこと、なかなか無いですよね。僕が監督するときだって、もう少し色々言われるものです(笑)。でも監督としては言ってくれた方が安心なときもありますからね。


近藤:本当に誰も何も言わないから、ヤバすぎて大問題になってるんじゃないかと心配しました。僕のいない別室で緊急会合をしているのではないかと(笑)。あの時間は本当に怖かったです(笑)。


*)小中理論:脚本家の小中千昭氏が提唱した、ホラー映画制作におけるルール。





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