アナログノイズへのこだわり
Q:役者さんに芝居をつけていく上で、難しい点はありましたか。
近藤:自主映画のときは自分の思う怖い喋り方や演技を共有して、やりたいことを伝えていたのですが、プロの役者さん相手にそれが通じるのだろうかという不安はありました。ところがプロの役者の皆さんは、こちらが多くを言わなくても「こういうことですよね」と察する能力が高い。とてもやりやすかったですね。
現場では演技をつけるというよりも、ちゃんとコミュニケーションを取ることを心がけていました。「この監督はどうやら本当にホラー好きで、めちゃくちゃ怖いことをやりたいのだな。じゃあそれをやってあげよう」と思ってもらえればなと。そこは気をつけました。
『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』©︎2024 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会
Q:ファウンドフッテージとして、デジタルのビデオテープではなく、あくまでもアナログのVHSテープにこだわった理由があれば教えてください。
近藤:こだわりはかなりありました。アナログであればあるほど生っぽく感じるんです。実際にテレビ番組を録画していた20年前くらいのVHSテープを入手して、そこに更に上書きして撮影しました。そこで撮った素材を更に重ねて3倍ダビングもしています。よって、映画に出てきたのは全てリアルな劣化映像です。ノイズの入り方は重要なので、上手くノイズを入れる方法は探りましたね。VHSデッキに磁石をくっつけたらノイズがいい感じに入るとか(笑)。
清水:そういう実験的な試みは大事ですね。僕も『稀人(まれびと)』(04)という作品で、デジタルの感じに納得がいかなくて、再生させたテレビ画面にカメラを向けて2〜3回繰り返して撮り直したりしました。何だかデレク・ジャーマンの『BLUE ブルー』(93)みたいな制作工程になってましたけど(笑)。でも本当にそういう地道な作業は大事で、CGで作ったノイズだとやっぱり生々しさは出ないんです。予測できないものが欲しいので、そこはこだわっただけのことはあると思いますね。
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監督/原案:近藤亮太
1988年北海道生まれ。大学在学時より映画制作現場のスタッフとして働き始め、上京後映画美学校にて高橋洋氏に師事。同時に自主制作を開始し、一貫して恐怖を追求した作風が評価を受ける。現在、テレビ東京「TXQ FICTION」で映像演出中。〈作品歴〉『OTHER SIDE』『リビング・アンド・デッド』(16)、『その⾳がきこえたら』(21)⽇本ホラー映画⼤賞 MOVIE WALKER PRESS賞、『アイスの森/禍話』(22)、『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(22)、第2回⽇本ホラー映画⼤賞⼤賞、『⻤の呼び声(「百奇夜噺」内収録)』(23)、「イシナガキクエヲ探しています」(24)、「飯沼一家に謝罪します」(24)
総合プロデューサー:清水崇
1972年群⾺県出⾝。⼤学で演劇を学び、助監督を経て 98 年に監督デビュー。原案/脚本/監督のオリジナル企画「呪怨」シリーズ(99〜06)は V シネや劇場版を経てハリウッドリメイク。⽇本⼈監督初の全⽶No.1 に。近作に『⽝鳴村』(20)、『樹海村』(21)、『⽜⾸村』(22)、『忌怪島/きかいじま』、『ミンナのウタ』(共に 23)。ホラー以外に『魔⼥の宅急便』(14)、『ブルーハーツが聴こえる/少年の詩』(17)、『ホムンクルス』(21)など。プラネタリウム『9次元からきた男』(16)が⽇本科学未来館にて上映中。昨年夏に公開された『あのコはだぁれ?』が⼤ヒットを記録。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』
1月24日(金)全国公開
配給:KADOKAWA
©︎2024 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会