影響を受けた『透明人間』と『ラブレス』
Q:怖がらせ方として「ジャンプスケア」よりも「身の毛がよだつ」感覚を大事にされているように感じましたが、その理由はなんでしょうか。
近藤:いちホラーファンとして、そういう怖さを切実に求めているんです。映画美学校では高橋洋さんに師事していて、高橋さんが監督された『霊的ボリシェヴィキ』(18)の現場に参加したのですが、高橋さんは「どこから撮りたいか?」がはっきりしていました。どの角度から見ると自分はグッとくるのかを信じて撮影されていたんです。それはかなり独特の感覚だと思いますが、側から見ていて納得しました。それまでは漠然と、必要な動作が撮れているか、分かりやすいかどうかといった基準で撮っていましたが、決してそうではないのだと。それ以降自分が撮るときには、まず今見ている画面を自分が怖いと感じているかどうかを大切にしました。あまり怖くないと思ったら一度立ち止まってみようと。
今言っていただいた「身の毛のよだつ」感じというのは、その空間をどうやったら怖く感じられるか、設定や芝居、そのロケーションの選び方や切り撮り方も含めて、自分なりに全て探った結果なのかなと思います。
『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』©︎2024 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会
Q:何も映ってないものを見せて怖がらせるためには、色んな試行錯誤があるのですね。
近藤:そうですね。カメラポジションを決めるときは、誰の視点か気になるような感じを狙うこともあります。映っていないかもしれないけれど、幽霊の視点かもしれませんよと。以前、リー・ワネル監督の『透明人間』(20)を観て「なるほど」と思ったんです。何も映っていなくても、何かがいると言い張れるんだと(笑)。
清水:本作は明らかに影響を受けている映画が2本がありますね。
近藤:はい。今言った『透明人間』と『ラブレス』(17 監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ)の2本はリファレンスとしてかなり大きく影響を受けています。
Q:そう言われると『ラブレス』と本作とでは、親子関係の描き方みたいなところは何か共通しているものがありそうですね。
近藤:家族のあり方や人間のあり方、山の撮り方から画面全体の雰囲気に至るまで、かなり参考にしています。