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『BLUE FIGHT ~蒼き若者たちのブレイキングダウン~』三池崇史監督 Vシネマの感覚を思い出した【Director’s Interview Vol.471】

『BLUE FIGHT ~蒼き若者たちのブレイキングダウン~』三池崇史監督 Vシネマの感覚を思い出した【Director’s Interview Vol.471】

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なぜ木下暖日と吉澤要人だったのか



Q:これだけ濃いキャラクターが集まっている中で、オーディションで選ばれた主役の木下暖日さんと吉澤要人さんが輝きを放っていて、周囲に全く負けていません。お二人はいかがでしたか。


三池:今の若手をオーディションしていると、事務所の方針だったり、本人が学習したりしていて、髪型や服装含めて何となく役者で食っていけそうな雰囲気を纏ってしまっている。でも今回は2人とも真っさらでした。


吉澤くんはダンスや歌の経験があり場数は踏んでいる。映画は少ないですが芝居の経験もある。すでにファンもついていて今時の感じのする青年ですが、周囲と違うのは何かしら不満を持っていること。今やっていることに対して感謝の気持ちを持つ大人の面がありつつも、その延長線だけでは満足していない。でもそれを表に出すではなく、内に秘めているタイプ。今回の役にピッタリでした。


一方、暖日に関しては全くのゼロ状態で、オーディションも初めてで台本も読んだことがない。人前で演技をするのも初めてですから、普通は照れたりしそうなものですが、割と堂々としていて平気なんです。自信のなさも感じさせない。カットがかかって自分に戻るとオドオドして挙動不審でしたが…(笑)。でもそれが良かった。思い切りが良くて、一度立ったら逃げられないことをちゃんと分かっている。彼は野球をやっていてピッチャーだったのですが、その経験があるおかげでしょうね。これまで練習した以上のことは出てこないという現実を痛いほど分かりつつも、ずっとマウンドに立ち続けてきた。ピッチャー交代を言い渡されるまでは、自分から逃げないわけです。それが出たのでしょうね。



『BLUE FIGHT ~蒼き若者たちのブレイキングダウン~』©2024 YOAKE FILM / BACKSTAGE


暖日はGACKTさんと殴り合うシーンがあるのですが、普通はビビりますよね(笑)。それでも彼は堂々といてくれた。もちろんそれは日常の彼とは違って、特別に緊張した状態ではあったと思います。ただ、彼はそういう役と出会えた。そういう役を必要とする監督と出会えた。それは宝くじが当たるより遥かに確率としては低いものです。


もし暖日が昭和の撮影所に現れれば、色んな先輩に揉まれていい役者になると思います。今の映画は前に出てくるような役ばかりで、今回のイクトみたいに口数が少なくて一歩下がっているような役は非常に少ない。そんな暖日らしい格好良さは、もう存在しなくなっているような気がします。それだけに今後どうなっていくのか楽しみな部分はありますね。いろいろ苦労もあるでしょうが、出来れば続けて欲しい。それは彼らの人生を思ってというよりも、監督としてこういう人間がいて欲しいから。彼らはそういう存在なんです。慣れてくると、誰かがやったような芝居を取り入れ出すと思いますが、そのときは「余計なことしなくていいから」とちゃんと言っておきます(笑)。


Q:前に出てこないキャラクターなのに、すごく目立つし存在感を放っています。


三池:普通は怒りの感情を眉で表現したりすることもありますが、暖日の場合はそれも一切無い。割とフラットな感じで、どちらかというとボーッと立っている。そのボーッとした奴が「こんなんで勝っても嬉しくねぇよ」とボソッと言っただけで格好いい。そのセリフを撮影した時は「すげえな、こいつ…」と、モニターの前でひっくり返りそうになりました(笑)。引き画の中でも存在感を発揮するタイプで、周りに人間がいる中でもふと目がいってしまう。そういう魅力を持っている。こんな役者はなかなかいないんですよね。




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