これまでの常識を壊して熱烈な支持を受けてきた格闘技イベント・ブレイキングダウン。その顔ともいえる格闘家・朝倉未来と起業家・溝口勇児が映画界に挑むプロジェクト、それが『BLUE FIGHT ~蒼き若者たちのブレイキングダウン~』だ。『クローズZERO』シリーズの大ファンだったという朝倉が迎えたのが、同シリーズを手がけた三池崇史監督。主要キャラクターのキャスティングに際しては2,000人規模の新人オーディションを敢行。W主演に大抜擢されたのが、映画初出演となる木下暖日と吉澤要人だった。前代未聞のこのプロジェクトに三池崇史監督はいかに対峙したのか。話を伺った。
『BLUE FIGHT ~蒼き若者たちのブレイキングダウン~』あらすじ
少年院で知り合い、親友になったリョーマ(吉澤要人)とイクト(木下暖日)。朝倉未来のスピーチに感銘を受けた二人は、格闘技イベント・ブレイキングダウンのリングを目指す。家族や仲間に見守られながら夢を追う二人。しかし、その前に因縁のライバルが現れ、予期せぬ抗争に巻き込まれてゆく。果たして彼らは、新しい人生に踏み出す事ができるのか?
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Vシネマの感覚を思い出した
Q:オファーが来た時の印象はいかがでしたか。
三池:エグゼクティブプロデューサーの溝口勇児さんから話をいただいたのですが、彼の周りのメンバーは映画を職業としている人がほとんどおらず、それが面白いなと。昔Vシネマを作っていたときも同じように様々な職種の人たちが参加していたんです。映画会社主導で作る作品もあれば、テレビ局主導の作品もある。はたまた、バブルでお金が余った経営者が昔の自分の夢である映画作りをやってみたり。そうやって、皆が映画というものに夢を見ていた環境が自分の30代の頃の仕事を支えてくれた。今回はその原点に帰るような感覚がありました。
今回の現場では「ああして欲しい、こうして欲しい」などは一切なく、昔と似た自由な感じがありました。朝倉さんたちもリングの上で自由に表現して来た人々。もちろんそこまでには相当な道のりがあったと思いますが、リングに上がった以上は自由だし一人きり。それと同じような潔さがありました。動き出した以上は「もうあとは監督に任せます」と。楽しい現場でした。
『BLUE FIGHT ~蒼き若者たちのブレイキングダウン~』©2024 YOAKE FILM / BACKSTAGE
Q:朝倉未来さんは『クローズZERO』シリーズ(07・09)の大ファンだったこともあり、ぜひ三池さんにということだったそうですね。
三池:そうやって僕は過去に助けられるんです。過去に作ったカルト作を観てくれた人が世界中にいて、そういう全く面識も無い人たちから声をかけてもらえる。中には大物プロデューサーがいる場合もある。それも全てご縁ですね。
Q:脚本を担当された樹林伸さんとのお仕事は初めてですが、いかがでしたか。
三池:物語を動かすのは“人間の心”なんです。樹林さんの場合、作家としてそこが非常に優れている。今回は親と子の物語でもあり、「親ガチャ」という言葉に代表されるような、境遇を嘆く風潮をぶっ飛ばす要素もあります。どんな環境で生まれたとしても、その境遇だからこそ自分らしく生きることが出来る。這い上がっていく途中で何かと出会う。そういう意味ではどんな環境で生まれようがイーブンなのだと。そして樹林さんの脚本は、それらを描くときに青臭さが無く、出てくる人が皆フラットで暑苦しくない。そこも面白かったですね。
みんな暑苦しい芝居だったら出来るけど、果たして若手がどうやって暑苦しくなく演じるのかなと。もうそこは暑苦しくない奴を集めるしかないんです(笑)。その点では、木下暖日と吉澤くんに出会えて良かったですね。