役者が勝負する場を作る
Q:集団バトルのシーンが最高ですが、大人数のキャラクターが入り混じるにもかかわらず、アクションの勢いやケレン味を止めることなく見せ方が整理されていて状況や進行がとても分かりやすいです。現場でどのようなプランで撮影し、それをどのように編集されているのでしょうか。
三池:こういう集団劇って、ある意味皆イーブンなんです。殴られる方も主役を立てるためにやられているわけではなくて、そのカットを撮っているときはそこに映っている人間が主役。そこから生き残っていく奴は、その数少ない場面ですごい動きや表情を繰り出している。役者が勝負出来る場所なんですね。撮影ではその辺を出来るだけ丁寧に愛情を持って拾っていって、編集の段階では冷静に判断して冷徹に切っていく。それでも残ってきた者だけがそこに映っているんです。
もちろん予算やスケジュール等の制約があるので、優先されていくものは決まっていくわけですが、その優先されるべきカットに彼らを逆に引き込む。役者同士が勝負できる場所を作って、「くそ!あの役やりたかったなぁ」といった役者としての思いをぶつけてもらう。そうやっていくと闘争心や悔しさが積み重なって出てくるわけです。
『BLUE FIGHT ~蒼き若者たちのブレイキングダウン~』©2024 YOAKE FILM / BACKSTAGE
実はバトルシーンにはロングバージョンがあるんです。家族やファンから「少ししか映ってなかったね」と言われたときに、見せられるものがあればいいなと。役者と監督ってそういう関係なんですよ。特に皆これからの人たちなので、この後ものすごく売れたりするかもしれないし、そのときは監督として使ってもらわなきゃいけない(笑)。なかなか楽しいですよ。こういう奴らとワイワイ作っていると。
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監督:三池崇史
米国アカデミー会員。CAA所属。横浜放送映画専門学院(現・日本映画学校)で学び、1991年にビデオ作品で監督デビュー。『新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争』(95)が初の劇場映画となる。Vシネマ、劇場映画問わず数多くの作品を演出。『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(07)、『十三人の刺客』(10)でヴェネチア国際映画祭、『一命』(11)と『藁の楯 わらのたて』(13)でカンヌ国際映画祭と、それぞれコンペティション部門に選出され、海外でも高い評価を受けている。主な作品に『クローズZERO』シリーズ(07・09)、『ヤッターマン』(09)、『悪の教典』(12)、『土竜の唄』シリーズ(14・16・21)などがある。
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『BLUE FIGHT ~蒼き若者たちのブレイキングダウン~』
新宿ピカデリーほか全国公開中
配給:ギャガ / YOAKE FILM
©2024 YOAKE FILM / BACKSTAGE