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『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』撮影監督:フェドン・パパマイケル デジタルとアナログの融合からフィルムルックを生み出す【Director’s Interview Vol.476】

©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』撮影監督:フェドン・パパマイケル デジタルとアナログの融合からフィルムルックを生み出す【Director’s Interview Vol.476】

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第97回アカデミー賞で8部門にノミネートされた『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』。5年の歳月をかけてボブ・ディランになりきったティモシー・シャラメの熱演が見ものだが、60年代のニューヨークを再現したビジュアルも素晴らしい。撮影を手掛けたのは、監督のジェームズ・マンゴールドと長年タッグを組んできたフェドン・パパマイケル。最新のデジタルシネマカメラとビンテージレンズを使い、フィルムトーンの見事なルックを生み出した。パパマイケルはいかにして『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』を撮りあげたのか。話を伺った。



『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』あらすじ

1960年代初頭、後世に大きな影響を与えたニューヨークの音楽シーンを舞台に、19歳だったミネソタ出身の一人の無名ミュージシャン、ボブ・ディラン(ティモシー・シャラメ)が、フォーク・シンガーとしてコンサートホールやチャートの寵児となり、彼の歌と神秘性が世界的なセンセーションを巻き起こしつつ、1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルでの画期的なエレクトリック・ロックンロール・パフォーマンスで頂点を極めるまでを描く。


Index


可能な限りティモシーに近づく



Q:冒頭からスクリーンに広がる60年代のニューヨークに驚きました。当時の空気のようなものも感じましたが、どのようにして今回のビジュアルを作られたのでしょうか。


パパマイケル:私は1962年生まれでマンゴールド監督は1963年生まれ、ほぼ同じ世代なんです。監督はニューヨークのトライベッカで生まれ育ち、私は80年代初頭にニューヨークに移ってきました。ボブ・ディランが当時住んでいたグリニッチ・ビレッジに私たちも色んな思い出があります。撮影にあたっては、当時の街並みを撮ったフォトグラファーたち、ソール・ライターやウィリアム・クラインらの作品を参考にルックブックをまとめました。それを美術のフランソワ・オデュイや衣装のアリアンヌ・フィリップスにも共有し、参考にしてもらいました。


撮影ではSONYのVenice2という低照度でも撮れる非常に感度の高いカメラを採用しました。そのおかげで、ナイトシーンや室内シーンでは出来るだけリアルな照明で撮り、本物らしく表現できたと思います。また、ハリウッド大作のような雰囲気は避けたかったので、デジタルイメージをフィルムトーンにしています。コダックやカラリストにも事前に相談し、粒子も入れて質感や色を調整しました。NYの街並みや店先など、当時の空気感を観客の皆さんに感じてほしいですね。



『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.


Q:ライブシーンも本作の醍醐味の一つで、その臨場感は素晴らしかったです。


パパマイケル:以前マンゴールド監督と『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(05)を撮ったときは、ライブシーンでの臨場感を出すためカメラは出来るだけ演者と一緒に舞台に立つようにしていました。今回も可能な限りティモシーに近づいて彼の表情を撮りたかった。観客も一緒に舞台に立っているような気持ちにさせたかったのです。カーネギーホールのシーンでは、ワイドレンズを使ってティモシーの周りを回り込みながら彼のクローズアップになっていきます。ティモシーにすごく親しみを感じるようなショットを狙いました。実はこのスタイルは『 フォードvsフェラーリ』(19)のときでも使っているんです。カーレースの大作ですが、同じように人物を大事にするということ。クリスチャン・ベールの気持ちや感情の変化を感じられるものにしたかったのです。





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