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『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』撮影監督:フェドン・パパマイケル デジタルとアナログの融合からフィルムルックを生み出す【Director’s Interview Vol.476】

©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』撮影監督:フェドン・パパマイケル デジタルとアナログの融合からフィルムルックを生み出す【Director’s Interview Vol.476】

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カメラを動かすには動機が必要



Q:狭いレコーディングスタジオをワイドで捉えた画も印象的です。マイクスタンドが生み出すパースも面白かったのですが、そういった美術の配置などにも指示を出されるのでしょうか。


パパマイケル:私も監督もフレーム内の構成にすごくこだわりがあります。二人とも平坦な構成は嫌いで、レイヤーがあって奥行きが感じられるものが大好き。録音ブースは狭いのですが、いろんな機材が置いてあってマイクスタンドが森のようにいっぱい立っていました。それを使わない手はないなと。少しずつカメラを移動しながらパースを変えて撮影しました。そうやって何をどこに置くかということはとても大事、美術の配置に関しては常に指示しています。最初から決めるのではなく、そこにあるものを見ながら少しずつ動かして調整していくんです。


Q:全体的にカメラが動いていてダイナミックな画が多いのですが、一方フィックスでじっくり捉えた画も存在します。その辺りの切り替えの判断はどのようにしているのでしょうか。


パパマイケル:実はフィックスのショットはあまりなくて、一見固定しているようでゆっくりと微妙に動かしています。そしてカメラを動かすのには動機が必要です。そのシーンで何が行われているのか、それが重要なんです。ライブシーンでステディカムをオペレートしてくれたスコット・サカモトは、『マエストロ:その音楽と愛と』(23)や『アリー/ スター誕生』(18)、『 フォードvsフェラーリ』も担当していましたが、彼のカメラは常に俳優に反応して動いていきます。カメラオペレーターは俳優の演技を感じ取りながらカメラを動かしていくわけですが、これには直感が必要とされます。ティモシーが2〜3曲続けて演奏する場面がありますが、それを絶対に邪魔することなく、カメラ側も演奏のリズムを維持していく必要がある。ものすごい緊張感です。



『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.


編集でも嵐の前の静けさのようなシーンとダイナミックなシーンをうまく切り替えてリズムを作っています。例えば、バスタブにじっとティモシーが座っていたら、次はダイナミックなシーンをつなげるといった感じです。それもストーリーテリングの一つの技術だと思います。以前撮影した『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(13)では、ワイドショットを多用して孤独感を表現しましたが、本作でもボブ・ディランが苦悩している部分を見せる場面があります。狂ったサーカスのような音楽業界に引き込まれて苦悩するディランの気持ちを、照明やフレームといったショットのデザインで見せていきたい。そうやって監督と話しながら撮影ビジュアルを作っていきました。





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