リピーターは映画でなく観客を見に来る!
Q:上田監督は、劇場に来てくれるリピーターのお客さんが、初見と思われる観客に対して、「どうだ!これ」っていう、まるで自分が作り手になったかのような気持ちになっているという趣旨の発言をされていますが、そのとおりだと思います。作っている時から、その手応えみたいなものはあったんですか。
上田:もう完全に後付けです。後付けというか、そうなんだ、そうなるんだなって思った。リピーターの人で、SNSとかにはっきり書いている人がいましたからね。俺は映画を見に行ってるんじゃない、映画を見に行っている人たちを見に行ってるって(笑)。
Q:だから僕も今、映画に興味のない人、例えば普段映画をあまり見ない自分の親戚とかが見たらどういう反応をするのか、ものすごく楽しみなんですよね。
上田:そうそう。だからみんな、お客さんをすごく連れてきてくれる。彼女や、妻、娘を行かせるんじゃなくて、一緒に来るんですよね。初見の人の反応を横で見ていたいから、みたいな(笑)
Q:だから、ちょっと今までにない感覚というか、こういう鑑賞体験はなかなかないと思います。
上田:そうですね。だから映画館でも公開1週目とかはインディーズ映画のファン、50代のおっちゃんが多かったんですけど、もう2週目以降からどんどん若い映画ファンの人とかが増えてきて、最近では普段映画を見ないっていう人とかまで来始めている。だから映画館で映画を見ない人が来るっていうことは、映画として見に来てるんじゃなくて、もうイベントとして来てるってことじゃないですか。話題になってるから。
Q:そうですね。参加しとかなきゃっていうことですね。
上田:で、映画館で映画を見るっていいなっていう体験を持ち帰ってくれるっていうのは、映画ファンを1人増やしたことになるから、それはすごくうれしいことですね。
Q:『カメラを止めるな!』は遂に日本全国で見られる態勢が整いました。全国のお客さんにメッセージをお願いします。
上田:今は手軽にネット配信やDVDとかで映画が見られる時代ですけれども、この作品はやっぱり映画館で他の人と一緒に見てもらって、見る前のわくわく、一緒に笑ったりドキドキしたりすること、そして帰り道に感想を言い合ったりすること含めて楽しんでいただきたいなと。映画を見に来るというよりは、映画を体験する、1本の映画の思い出を作りに来るという形で。だからぜひ、絶対映画館で見てください(笑)。
監督・脚本・編集 上田慎一郎
1984年 滋賀県出身。中学生の頃から自主映画を制作し、高校卒業後も独学で映画を学ぶ。2010年、映画製作団体PANPOKOPINAを結成。現在までに8本の映画を監督し、国内外の映画祭で20のグランプリを含む46冠を獲得。2015年、オムニバス映画「4/猫」の1編「猫まんま」の監督で商業デビュー。妻であるふくだみゆきの監督作「こんぷれっくす×コンプレックス」(2015年)、「耳かきランデブー」(2017年)等ではプロデューサーも務めている。「100年後に観てもおもしろい映画」をスローガンに娯楽性の高いエンターテイメント作品を創り続けている。本作が劇場用長編デビュー作となる。
主な監督作:短編映画 「ナポリタン」(2016年)、「テイク8」(2015年)、「Last WeddingDress」(2014年)、「彼女の告白ランキング」(2014年)、「ハートにコブラツイスト」(2013年)、「恋する小説家」(2011年)、長編映画「お米とおっぱい。」(2011年)。
取材・文:稲垣哲也
TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)など。現在、ある著名マンガ家のドキュメンタリーを企画中。
『カメラを止めるな!』
2018年6月23日(土)より新宿K’s cinema、池袋シネマ・ロサにて公開!
配給:ENBUゼミナール
(C)ENBUゼミナール