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『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』モーガン・ネヴィル監督 ドキュメンタリーをレゴ®に置き換える【Director’s Interview Vol.484】
初体験のアニメーション制作
Q:制作にあたり、基本的なルールや方針は決めたのでしょうか。
ネヴィル:そうだね。いくつかのルールを決めたよ。どんな方法でやってもいいとなると逆効果だし、ルールを決めることで制作の焦点が定まるからね。一つ目のルールは、現実を元にしたアニメにすること。二つ目は、ファンタジーを紐解く鍵として音楽を使うという事。音楽が登場すると現実が消滅する。ファンタジーの世界に突入し何もかもが可能になる。このルールに従って制作した。また、台詞は実際の会話が元になっているんだよ。
Q:全くのアニメ素人のあなたが、新しいジャンルを扱う事の大変さや楽しさは何でしたか。
ネヴィル:確かに深いプールに飛び込むような体験だったから、逆に楽しかったと言えるかな。アニメの素人だったから、アニメについて何もかもを学ばなければならなかった。この映画のアニメには2年半かけたからね。大勢のアニメーターと一緒に仕事し、彼らを尊敬するようになった。彼らの細部にかける熱意がとてつもないものだった。
『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』© 2024 FOCUS FEATURES LLC
ドキュメンタリーとは正反対で、アニメーションはコントロールがすべてだ。ドキュメンタリーには最低限のコントロールしかない。そんな僕のドキュメンタリーの経験が、このアニメーションのどこかに反映されていてほしいと思う。例えば手持ちカメラの使い方や、焦点のボケとかね。そんな要素をアニメ化してみたかった。アニメーターには「なんで間違った方法でやりたいのか? クレイジーだ」と言われたけれど、僕にとっては間違いこそがリアルなんだ。
逆にアニメでしかできない事も活用した。宇宙にいるとか水中にいるとか、そういうことも可能になるからね。その点では、新しい形でのストーリーテリングを開拓している感じだった。アニメとドキュメンタリーの壁をこえて、異色の視野をもったファレルを真実に近い形で語れたと思う。