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『カーテンコールの灯(あかり)』ケリー・オサリヴァン&アレックス・トンプソン監督 演じることを通して喪失と向き合う【Director’s Interview Vol.499】

©2024, Ghostlight LLC.

『カーテンコールの灯(あかり)』ケリー・オサリヴァン&アレックス・トンプソン監督 演じることを通して喪失と向き合う【Director’s Interview Vol.499】

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他人を演じることで自分の感情と向き合える



Q:映画でも子供たちによる演劇の場面が出てきますが、おふたりとも子供の頃から演劇に慣れ親しんできたのでしょうか。


オサリヴァン:私は映画で描かれたような地域劇団に6歳の頃から参加していました。私が育ったアーカンソー州では、当時は文化的な機会がほとんどなくて、劇団での時間が、自分の感情を自由に表現できる唯一の場でした。


ダンの場合も同じなんですよね。彼は自分ではない誰かになるという試みを通して、感情を表現する場所を発見するんです。そうして彼はついにカタルシスを経験するわけですが、その過程に「遊びの時間」があったことも忘れてはいけません。演劇をつくる過程では、みんなでダンスをしたりゲームをしたり、いろんなことを試してみるものです。こうした「遊びの時間」も演劇にとって大事な要素なんです。



『カーテンコールの灯(あかり)』©2024, Ghostlight LLC.


Q:演劇の過程を描いた映画は、ジョン・カサヴェテスの作品など、これまでも多くつくられてきました。おふたりが本作をつくるうえで何か参考にした作品はありましたか?


オサリヴァン:クリストファー・ゲスト監督の『Waiting for Guffman』(97)が大好きで、何度も観ています(注:ロブ・ライナー監督『スパイナル・タップ』(84)の脚本・主演を務めたゲストによるモキュメンタリー作品)。ある田舎町で、市民が町の歴史をミュージカルにしようと奮闘する様を映した、とても馬鹿げていてものすごく楽しい映画です。それからイギリスのドキュメンタリー映画『Alien on Stage』(20)。毎年クリスマスにパントマイム公演をしているバス運転手たちがいるんですが、彼らがある年のクリスマスに映画『エイリアン』(79)の劇を上演しようと決める。そしてついに彼らの劇がロンドンのウェストエンドの劇場で上演されるまでを追った話で、観ているとみんな彼らを応援したくなってきます。これが、今回の映画をつくるうえで参考になった2作品です。 


トンプソン:『Waiting for Guffman』は、「さすがにあんなメチャクチャではないよね?」と言いたくなるほど荒唐無稽なコメディですが、実際に演劇がつくられていく裏側というのはわりとあんな感じなんですよね(笑)。それと僕の場合は、演劇をつくる映画ではないけれど、映画の準備をしながらずっと『月の輝く夜に』(87)のサントラを聴いていました。


Q:演劇をつくりあげていく過程とともに主人公が喪失と向き合うまでを描いた物語には、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』(21)もありますね。

 

トンプソン:信じられないでしょうがまだ観ていないんです。

 

オサリヴァン:映画の準備中にもみんなに言われました。「『ドライブ・マイ・カー』はもう観た?」って。いい評判しか聞かないので絶対に観ようと思います。





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