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『カーテンコールの灯(あかり)』ケリー・オサリヴァン&アレックス・トンプソン監督 演じることを通して喪失と向き合う【Director’s Interview Vol.499】

©2024, Ghostlight LLC.

『カーテンコールの灯(あかり)』ケリー・オサリヴァン&アレックス・トンプソン監督 演じることを通して喪失と向き合う【Director’s Interview Vol.499】

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親密な関係性が映画にもたらすもの



Q:ダン役を演じたキース・カプフェラーさん、妻のシャロン役のタラ・マレンさん、娘のデイジーを演じたキャサリン・マレン・カプフェラーさんは実際の家族だそうですね。さらにアレックスさんとケリーさんもパートナー関係にありますが、そうした現実の関係性が映画にも何か影響を与えたと思いますか?


オサリヴァン:影響があったとすれば、普通の現場よりさらに心地よい環境をつくれたことでしょうか。初めて仕事場で会う俳優同士の場合、たとえば身体的に触れ合う場面では、それを自然にできるまでに時間をかける必要がある。でもキースやタラは普段から親密な関係性ですでに化学反応は起きているわけですから、愛情を示したり激しい喧嘩をするような場面でも、恐れずにやってもらえたと思います。


それと撮影中、私はちょうど妊娠7、8ヶ月の状態だったので、この映画を撮りながらずっと、親になるとはどういうことかを考えていました。


トンプソン:子供という存在を通して俳優たちとの結束はより強くなったと思います。撮影が終わるとたくさんの赤ちゃん用グッズをプレゼントされましたし、実際に子供が生まれた後は、私はキースと週に2回くらい朝一緒にコーヒーを飲むようになり、同じ父親として相談に乗ってもらうようになりました。


私たちふたりの関係についていうと、良くも悪くも、仕事と私生活の境目があまりないということでしょうか。仕事をしていても自然と私生活での事柄が入ってきてしまうんですよね。


オサリヴァン:単なる仕事上の関係なら遠慮してしまうところをより本音でぶつけ合えるという点では、利点かもしれません。



『カーテンコールの灯(あかり)』©2024, Ghostlight LLC.


Q:劇中に出てくる場所も素晴らしかったです。ダンたちの住む家や、劇団員が稽古をする部屋には、実際に生活しているような親密な空気を感じました。こうした場所はどのように見つけたのでしょうか。


トンプソン:前作『セイント・フランシス』を低予算で収めるために、私たちはあるルールを決めたんです。それは、映画をつくるうえで撮影場所にはいっさいお金をかけないこと。友人たちに頼んだりしてお金のかからない撮影場所をどうにか探し出しました。その方針は本作でも同じで、ダンたち一家が住んでいる家は、『セイント・フランシス』のプロデューサーの友人の友人の家を借りることができました。家を見たときに、あの家族が暮らしている様子がすぐに頭に浮かんできて、ぜひここを使いたいとお願いしました。


劇団のリハーサル場は、最初は実際に劇団の稽古場として使われている場所をいろいろ訪ねてみたんですが、どこも綺麗すぎてぴんとこなかった。そうしたらある日、小道具を借りるために訪ねた劇団で、以前はリハーサル場だったけど今は倉庫にしているという部屋を見せてもらったら、そこがぴったりだった。それであの場所を借りることにしました。


オサリヴァン:セットとして用意された場所を装飾して相応しいものに作り変えるより、元々その場所が持っている資質を活かしていこう。というのがロケ地を決めるうえでの私たちの哲学です。俳優探しにおいても同じです。有名な映画俳優を起用し学校の先生や建設作業員を演じてもらうには、観客の先入観を崩すためにさまざまな準備が必要になります。その点、今回起用した俳優たちの多くは主に舞台で活躍する人たちで、演じた役柄により近い生活をしています。大事なのはリアリティが感じられるかということなんです。





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