
©2024, Ghostlight LLC.
『カーテンコールの灯(あかり)』ケリー・オサリヴァン&アレックス・トンプソン監督 演じることを通して喪失と向き合う【Director’s Interview Vol.499】
カーテンというモチーフ
Q:カーテンというモチーフにも惹かれました。劇の始まりが舞台の幕が開くことで示されるように、この映画の始まりも、ダンが家の窓のカーテンを開くところから始まりますよね。映画の随所で見られる「カーテン/幕が開く」というイメージがもたらすものについて教えてください。
トンプソン:とても寓話的な行為ですよね。「さあこれから物語が始まりますよ」という幕開けの合図ですから。この映画は、演劇とはまったく無縁の立場で長年生きてきた主人公が色んな人と出会い、思いもしなかった経験をしていく話ですから、その幕開けとしてカーテンを開ける行為はぴったりだなと思ったんです。
『カーテンコールの灯(あかり)』©2024, Ghostlight LLC.
実はこの映画で唯一VFXを使った部分があります。ダンたちの劇がいよいよ始まるという瞬間、暗闇ですっと舞台の幕が開き、ステージに立ったデイジーが最初の口上を述べる場面。あそこで使ったのは、実は冒頭の窓の場面で使ったカーテンと同じ映像なんです。VFXを使って、あの舞台の幕として使いました。ダンの物語がここからもう一度始まるんだということですね。
もうひとつ、私たちは当初から、この映画はダンたちが暮らす家を映すことから始めて、彼らの家を映すことで終わろうと決めていました。ただし、始まりはダンが家の中からカーテンを開け外を眺めるのに対し、最後はより客観的な角度から家と彼らの姿を撮っています。映画の始まりであの家族が抱いていたさまざまな疑念や迷いは、いろんな経験を経て解消されていく。だから最後はこの家族を解き放ってあげようと思ったんです。そうしてあのようなラストシーンが出来上がりました。
『カーテンコールの灯(あかり)』を今すぐ予約する↓
監督/脚本:ケリー・オサリヴァン
1984年、アーカンソー州ノースリトルロック出身。脚本家・監督・俳優として活躍。『セイント・フランシス』では脚本と主演を務め、作品はSXSW映画祭でプレミア上映され、特別審査員賞と観客賞を受賞。2020年に最も評価されたインディーズ映画の一つとなり、ゴッサム賞「ブレイクスルー・アクター」部門、インディペンデント・スピリット賞ジョン・カサヴェテス賞にもノミネートされた。俳優としてステッペンウルフ・シアター、グッドマン・シアター、ライターズ・シアター、パシフィック・プレイライト・フェスティバル、Ojai Playwrights Conferenceで舞台に立つ。テレビ出演には「Sirens」の2シーズン、映画出演にはインデペンデント映画の「Henry Gamble’s Birthday Party」 「Olympia」「Sleep with Me」などがある。
監督:アレックス・トンプソン
1990年、ケンタッキー州出身。シカゴを拠点に活動する脚本家・監督・プロデューサー。大学を卒業後LAのキャスティング会社であるLessall Castingでアシスタントを務めたのち、ローマ国際映画祭最優秀審査員賞を受賞した『Calumet』などいくつかの作品を手掛ける。長編デビュー作『セイント・フランシス』が2019年のSXSW映画祭でプレミア上映され、特別審査員賞と観客賞を受賞。数多くの映画賞で高い評価を獲得。New City’s Film(シカゴの映画情報サイト)では“Chicago’s Screen Gems”(シカゴのスクリーンの宝)リスト50にも選ばれている。
取材・文:月永理絵
映画ライター、編集者。『朝日新聞』『週刊文春』『CREA.web』などで映画評やコラムを連載中。ほか映画関連のインタビューや書籍・パンフレット編集など多数。著書に『酔わせる映画 ヴァカンスの朝はシードルで始まる』(春陽堂書店)。
『カーテンコールの灯(あかり)』
6月27日(金)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国公開
配給:AMGエンタテインメント
©2024, Ghostlight LLC.