『ダイ・ハード4.0』(07)や『トータル・リコール』(12)など、熱いファンがいる作品のシリーズやリブートなどを手がけ、その期待に見事応えてきたレン・ワイズマン監督。今回手掛けたのは、アクションの新たな地平を切り拓いた『ジョン・ウィック』シリーズの最新作。チャド・スタエルスキというアクション・マエストロと共に、最高のアクション映画を生み出してくれた。
レン・ワイズマン監督はいかにして『バレリーナ:The World of John Wick』を作り上げたのか。話を伺った。
『バレリーナ:The World of John Wick』あらすじ
孤児を集めて暗殺者とバレリーナを養成するロシア系犯罪組織:ルスカ・ロマ。裏社会に轟く伝説の殺し屋:ジョン・ウィックを生み出した組織で殺しのテクニックを磨いたイヴは、幼い頃に殺された父親の復讐に立ち上がる。組織に背き、1000年の長きにわたって続く暗殺教団の存在にたどり着くイヴ。しかし、彼女の前に、あの伝説の殺し屋が現れる…。果たしてジョン・ウィックは敵か味方か?最強の殺し屋と対峙したイヴの選択とは?
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目の肥えた観客を驚かせるアクション
Q:あなたが手がける作品はアクション映画を一つ上のレベルに押しあげている印象があります。洗練されたルックや美術などの世界観もその要素の一つかと思いますが、こだわりはありますか。
ワイズマン:私のキャリアは美術部門から始まりました。最初は絵コンテを描いていて、その後、小道具も担当するようになりました。美術を駆使して世界を作り上げることが大好きなんです。ルックについては夜に撮影することを意識しています。夜は黒いキャンバスみたいなもので、そこに光を付け加えていくことができる。夜の撮影はつい多くなってしまいますね。
Q:“洗練さ”だけではなく、豪快なアクションシークエンスがあることも特徴の一つかと思います。本作では車が猛スピードで突っ込んでくるシーンが素晴らしかったですし、『ダイ・ハード4.0』でパトカーがヘリコプターに突っ込むシーンも強く記憶に残っています。そういったアクションシークエンスを盛り込むことは意識されていますか。
ワイズマン:その通り、強く意識していますし、そういったシーンにすごく時間をかけます。映画を観ているときに、予期しないことで驚くのが好きなんです。言及された『ダイ・ハード4.0』のシーンはまさにそうですね。本作の車が突っ込んでくるシーンについても、ただ車がぶつかるだけでは、最近の目の肥えた観客を驚かせることはできない。今回はある種のミスリードを狙いました。前のシーンがひと段落してカメラがゆっくり上がっていき、他の音楽が流れ出して、「あ、このシーンは終わりなんだな」と観客をリラックスさせておいたところに、予期せぬアクションを放り込む。撮影しているカメラ自体も慌てて対応しているような、そんな驚きが面白いなと。観客が初めて見るような要素をいつも追求しています。
『バレリーナ:The World of John Wick』© 2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
Q:さまざまなアクションシーンを観てきた観客を驚かせることは、かなり高いハードルかと思います。その辺は日々研究されているのでしょうか。
ワイズマン:その探求が楽しいんです。アクションシーンの撮影はすごく大変で、時間も掛かるしたくさんのハードルを越えなければならない。だからこそ、観客から「なんか観たことあるね」なんて言われちゃうと、苦労して撮ったものが台無しになってしまう。私だって思いますからね。「すごく良くできたアクションシーンだけれど、どこかで観たことあるな」と。常にこれまでのものを越えていこうと、毎回探究しながら撮影を楽しんでいます。
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