場所を捉える
Q:スクリーンサイズが4:3のスタンダードになっていますが、これは漫画のコマを意識されたのでしょうか。
横浜:そこも漫画からは一度離れて話し合いました。今回はアート作品が画面の中にいっぱい映るだろうから、横長だとそれらをうまく捉えられるかどうかわからない。そこが4:3だと無駄な余白がなくて、どんなかたちの作品が来ても適度に画におさめられるのではないかと、カメラマンの月永雄太さんが提案してくれました。私自身も4:3は好きなサイズだったので一度やってみたかった。撮影前にはカメラテストを行い、実際に人物に動いてもらい、それぞれのスクリーンサイズでどのように見えるかを確かめた上で、4:3に決めました。みんなで探り、迷いながら決めた感じでした。
Q:月永さんと組まれたのは今回初めてでしょうか。
横浜:映画は初めてです。ずいぶん前にASIAN KUNG-FU GENERATIONのレコーディングドキュメンタリーを3日間撮るという仕事があって、そのときにご一緒した以来でしたね。
Q:中学生の立花(中須翔真)がヨーコ(唐田えりか)から金魚をもらうシーンなど、人物の配置や構図が面白く、こだわりを感じました。
横浜:あのシーンは、上にガードレールがあってその下に垂直にトンネルが通り抜けているという面白い場所だったんです。高低差があると撮る上での芝居もつけやすいですし、カメラ位置もいろいろ可能性があるので、「ここは何かで使いたいですね」とロケハンのときから決めていました。そういった場所ありきのシーンもいっぱいあります。月永さんが、あの場所の面白さを一番よく見つめられるところにカメラを置いてくれました。
『海辺へ行く道』©2025映画「海辺へ行く道」製作委員会
Q:映画ではいろんな場所が出てくるので、同じ場所が繰り返し出てくる印象がありませんでした。
横浜:小豆島は大きい島ではあるのですが、回ろうと思えば1日あれば回れちゃうぐらいの大きさ。制作部さんは撮影前から滞在していて、小豆島の撮影可能な場所をほとんど洗い出してくれたと思います。
あと今回の映画は、家の外観をほとんど撮っていないんですよ。奏介(原田琥之佑)の家の外観らしき外観も撮っていないし、A氏(諏訪敦彦)の家の外観も撮っていない。だから位置関係がよくわからないし、これはどういう場所で行われているのかという全体像が見えない。断片的な場所の捉え方をしているところが多いですね。
Q:海に全くゴミが落ちていなくて、とても綺麗だったことも印象的でした。
横浜:確かに小豆島って他のどこの海よりもゴミが落ちてなかったですね。とある地方に行ったらゴミだらけで、海外からのゴミが流れ着いているところもいっぱいありました。瀬戸内海の地理的要素も関係しているのかもしれません。
Q:港には船があまり並んでなかったですね。
横浜:現地に漁船はありましたが、映画にはほぼ映ってないですね。人の気配があるようでないというか、情緒的になりすぎないようにしたというか…。たぶん原作もそうだと思うのですが、三好さんは漁船を描かれる印象があまりないです。土着的な風景が原作にないから、そのイメージが頭にこびりついていたのかもしれません。
映画で海を撮る時は、水平線の位置を考えながら撮りがちになるのですが、月永さんはそういうのをあえてやらず、そういう意識から解放されようとして海を撮っていたんじゃないでしょうか。