素材を見る力
Q:編集を担当された大川景子さん(『ケイコ 目を澄ませて』『夜明けのすべて』)は初タッグかと思いますが、スタッフィングの経緯を教えてください。
横浜:大川さんは昔から知り合いだったのですが、仕事をしたことはありませんでした。この映画の城内プロデューサーが三宅組を数本やったことがあって、その流れで大川さんが良いんじゃないかと。私も大川さんとやってみたかったんです。大川さんの編集って興味深いものがあって、素材を見る力がすごく強いんですよね。素材のポテンシャルみたいなものを発見する力が強くて、ちょっと勉強したいなと。
『海辺へ行く道』 ©2025映画「海辺へ行く道」製作委員会
Q:“素材を見る力”とはテイクの違いなどのことでしょうか。
横浜:テイクの違いももちろんありますが、このカットはどこまで見せるべきか、どこから始めるべきかなど、その判断基準みたいなものがすごく的確だなと思いながら編集作業を見ていました。
Q:何かの目的に向かっている映画ではないのに、映画にのめり込んでしまうのは、独特のテンポも一因になっているのでしょうか。
横浜:素材自体がテンポ的にゆったりしていたというのもあるのですが、派手なエピソードはないけれど一応いろいろ起こる映画なんです(笑)。その順番をちょっと変えるだけで全く見え方が変わったりして、その試行錯誤に時間をかけました。プロデューサーやカメラマンなど色んな人に意見をもらいつつ編集したので、全然違う見え方がするバージョンも存在していました。今回は編集期間を潤沢にもらえたのも大きかったですね。
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監督/脚本:横浜聡子
1978年、青森県生まれ。横浜の大学を卒業後、東京で1年ほど会社員をし、2002年に第6期映画美学校フィクションコース初等科に入学。2004年、同高等科卒業。卒業制作の短編『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』が2006年第2回CO2オープンコンペ部門最優秀賞受賞。CO2からの助成金を元に長編1作目となる『ジャーマン+雨』を自主制作。翌2007年、同作で第3回CO2シネアスト大阪市長賞を受賞。自主制作映画としては異例の全国劇場公開となる。2008年、商業映画デビュー作『ウルトラミラクルラブストーリー』(出演:松山ケンイチ、麻生久美子)を監督、2009年6月に全国公開。同年のトロント国際映画祭、バンクーバー国際映画祭他、多くの海外映画祭にて上映された。また同作にて主演の松山ケンイチが第64回毎日映画コンクール男優主演賞、第24回高崎映画祭最優秀主演男優賞を受賞、作品が第19回TAMA CINEMA FORUM最優秀作品賞を受賞した。2016年『俳優 亀岡拓次』(出演:安田顕、麻生久美子)が公開。2021年に全編青森にて制作した『いとみち』では同県出身の駒井蓮をヒロインに迎え、第16回大阪アジアン映画祭にて観客賞とグランプリをダブル受賞。第13回TAMA映画賞特別賞、第36回山路ふみ子文化賞を受賞するなど、多数の賞を受賞した。日常にたゆたう「名もなき存在」を捉える鋭い洞察力とオリジナリティ溢れるユニークな表現は中毒性が高く、業界内外で熱狂的なファンを擁す。その他の作品に、短編映画『おばあちゃん女の子』(2010)『真夜中からとびうつれ』(2011)『りんごのうかの少女』(2013)『トチカコッケ』(2017)、テレビドラマ「バイプレイヤーズ 」シリーズ(2017〜18/TX)「ひとりキャンプで食って寝る」(2019/TX)「有村架純の撮休」(2020/WOWOWプライム)「季節のない街」(2023/Disney+)など。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『海辺へ行く道』
8月29日(金)公開
配給:東京テアトル、ヨアケ
©2025映画「海辺へ行く道」製作委員会