3人を1人の人生として描く
Q:脚本は向井康介さんです。どのような経緯でオファーされたのでしょうか。
永田:原作と同じように、私に足りないものを書ける方に脚本をお願いしたいなと。この作品は向井さんが脚本を手がけた『ある男』(21)や『愚行録』(16)のように、物語が交錯している感じもあり、しかも向井さんは青春モノが得意。これはもう「向井さんだ!」と。ただ、向井さんとは面識がなかったので、ツテを辿って紹介してもらいました。それで一席設けて、お見合いみたいな感じで(笑)、一つずつ進めていきました。
Q:脚本化に際して向井さんとはどんなお話をされましたか。
永田:実は最初、向井さんには「登場人物が多いですね…」とやんわりとお断りされたんです。それで慌てて「いや、ちょっと待ってください!」「3人の話が1人の人生に見えるようにしたいんです」と伝えると、「なるほど3人ですか…それはおもしろそうですね」と。
原作ではたくさん人が出てきて複雑に絡み合っているので、確かに映画では全部を描けない。誰かを削ることになるわけですが、削るというよりも自分が描きたい3人をメインにしたいなと。それを向井さんに伝えたら納得していただけました。

『愚か者の身分』©2025映画「愚か者の身分」製作委員会
Q:原作の翻案は西尾さんからもOKだったと。
永田:変えることが前提だったわけではありませんが、どうしても全部は描けないから誰かをピックアップすることになる。その旨は伝えていました。西尾さんからは「原作と映画は別ものだから自由にしていいよ」と快諾してもらいました。知り合いだったことも大きかったですね。