バックボーンから外見まで、キャラクターの作り方
Q:北村匠海さん、林裕太さん、綾野剛さんと、三世代の関係性が見事にハマっています。それぞれのキャラクターはどのように作られたのでしょうか。また、タクヤと梶谷は共にクールな性格ですが、同じ性格にした理由があれば教えてください。
永田:そういう意味では、タクヤの方をよりクールに描いています。梶谷はカッコ良くしようとして地が出て慌てるタイプ。普段の綾野さんは“いい男”の役が多いですが、今回はあえて“いい男”にしていません。綾野剛が演じる“情けない男”は新鮮に映るかもしれませんね。
タクヤと梶谷は家族の愛情を受けて育っているので、だからこそ2人は人に対する愛情を持てる。タクヤが戸籍売買をしながら悪になりきれないのも、“家族”を知っているからこそ。一方でマモルは家族を知らない。マモルは愛情を知らずに育っているから人間不信の塊になっていて、人を信頼することができない。マモルを演じた林裕太はオーディションで選んだのですが、そういう表情が出来る人でした。その辺のバックボーンを3人にはしっかり伝えています。皆ちゃんと理解した上で色々とやってくれましたね。
また北村さんには、マモルに対しての兄貴分の時と、梶谷に対しての弟分の時の、それぞれの表情を大事にしてもらいました。基本はクールだけど、そこに微妙な差がある。今は突っ張っているけれど過去のシーンでは無垢な少年になってもらうなど、しっかりと演じわけてもらいました。

『愚か者の身分』©2025映画「愚か者の身分」製作委員会
Q:ジョージ、佐藤、海塚などは、外見も性格も同情の余地のない極悪人に描かれていますが、彼らのキャラクターはどのように作られたのでしょうか。
永田:佐藤はかなり手をかけましたね。私は関西人なので、関西弁は全部自分で指導しました。「あめちゃん」とか「くまちゃん」とか、関西弁は何でも「ちゃん」をつけるので、それを仕込んだ上で「マモルちゃ~ん」といやらしく言ってもらったり、その辺のニュアンスは細かく指導しています。佐藤を演じた嶺豪一さん本人はすごく優しい人なんです。だから「その人の良さは封印してください」と(笑)。役作りで10kg太ってもらったのですが、本人としてはちゃんと悪人になっているか心配だったようです。
ジョージを演じた田邊和也さんは『TOKYO VICE』(22 WOWOW)などで悪い役をやっているので、私もイメージはしやすかった。アクションもあったので体も作ってくれましたが、ジョージといえばやっぱり金歯ですね。森井輝プロデューサーのアイデアでしたが、金歯を着けて一気に悪いビジュアルになった。本人も役作りに入りやすかったと思います。海塚役の加治将樹は「イタズラなKiss~Love in TOKYO」(13 フジテレビTWO)という、ラブコメでも一緒にやったことがあったので、本人の性格はよくわかっていました。器用なので、そんなに話さなくても自分が何をやれば良いか分かってくれていたし、やりやすかったですね。
Q:佐藤は今どきの“成金感”が絶妙でした。
永田:そこは衣装部さんに強くお願いしました。佐藤は「ブランドロゴが入っていたら安心!」みたいなキャラにしていて、携帯も財布もチャラチャラつけているのも全部ブランド物。TシャツもわかりやすくGUCCI!って書いてある。衣装部さんが“ザ・成金”な衣装をたくさん探してきてくれたので、爆笑しながら衣装合わせをしました。クマのTシャツもGUCCIで、「これ、どこから探してきたの?」と(笑)。よく似合うし、もう全部が最高でしたね。