大きかったのは加奈子の存在
Q:兄の死後を整理する、誰もが経験する普通の4日間なのに、なぜここまで面白い映画になるのかが不思議でした。監督の中で面白さは見えていたのでしょうか。
中野:前述の通り、兄の出し方はクリアできたし、それぞれ出てくる人物のドラマも見えていました。中でも大きかったのは、加奈子の存在ですね。加奈子が子供を一緒に連れて帰るという、もう一つ大きなドラマがあったので、そこも面白く出来るなと。その辺りの勝算も最初からありました。
Q:理子と兄の関係、加奈子と子供たちの関係の二つが軸としてありますが、そこのバランスで気を配ったことはありましたか。
中野:エピソードとして主役は絶対に理子にしなきゃいけないのですが、加奈子と子供のエピソードはやっぱり強い。だからといって母子が立ちすぎると、理子と兄が弱くなる。そこのバランスは一番考えました。あくまでも理子の映画にしなければいけないと思いつつ作っていました。

『兄を持ち運べるサイズに』©2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
Q:中野監督の作品はキャスティングが豪華なイメージがありますが、今回はどのようにキャスティングを進められたのでしょうか。
中野:もちろん最初は理子からでした。キャスティングって本当に縁とタイミングなんです。何人か理子役の候補がいる中に、柴咲さんがいました。彼女は圧倒的主役感を持っている方ですが、今回のような役はあまり見たことがない。それでもきっと、しっかりアプローチしてやってくれるだろうと。それで「今までにない柴咲さんを撮ろうと思います」と最初にオファーを出し、柴咲さんに受けていただくことになりました。その次に決めたのがお兄ちゃん役。これはもうオダギリさんしかいなかった。オファーを出したら脚本を読んで「面白いからやるよ」と直接僕に連絡をくれたんです。やっぱり嬉しかったですね。そうして2人が決まった上で、加奈子を誰にしようかとバランスを考えた時に、どうしても一度やってみたかった満島さんが浮かびました。満島さんは脚本をすごく気に入ってくれて、受けていただくことになりました。そんな順番で3人が決まっていきました。
Q:キャスティングの際、役者同士のバランスはポイントになってくるのでしょうか。
中野:最初は他の候補の方もいますので、「もしこの人だったら、こっちの役はこの人だよね」みたいな話はよくしていました。キャスティングの際にバランスを考えることは結構あります。