120分のせめぎ合い
Q:父子が住んでいる家の中が、かなりリアルで驚きました。
中野:原作者の村井さんが当時の様子を全部写真に撮っていたので、それを参考に作り込んでいます。だから室内の汚れ具合とかはリアルですよね。とにかく物が多いセットでした。
Q:今回の撮影は岩永洋さんです。中野作品ではカメラマンが常に変わっているようですが、スタッフィングはいつもどのように決めているのでしょうか。
中野:主要スタッフは結構一緒ですが、撮影に関してはいまだに正解がわからなくて…(笑)。いろんな人とやりたいなと。
Q:今回はなぜ岩永さんとご一緒されたのでしょうか。
中野:岩永君は学校が一緒だったので、だいぶ後輩ですが自主映画でお願いしたことがありました。プロになってからは今回が初めてでしたが、いい画を撮ってくれましたね。

『兄を持ち運べるサイズに』©2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
Q:本作と『浅田家!』『長いお別れ』(19)の時間は全て127分です。(『湯を沸かすほどの熱い愛』は125分)、意識されているものはありますか。
中野:プロデューサーから毎回「120分を切りなさい!」と怒られているので(笑)、それを粘って粘って伸ばしている結果です。130分まで伸ばしたら怒られるから、いつもだいたい127分くらいになるんです。
Q:切る場合は、どういうところを切るのでしょうか。
中野:そこは難しいところですね。最後の方は「10秒減らせ」と言われて、「10秒!?だったらもう1フレずつ切っていこう!」とか。本当にそんなレベルでやっています(笑)。
Q:影響を受けた映画や監督を教えてください。
中野:僕は映画少年でも何でもなかったので、影響を受けた人がいないんです。大学を卒業して映画学校に入って、そこから映画を観始めているので…。でも自主映画を撮り始めて、「自分の表現ってなんだろう?」と映画がよくわからなくなってきたときに観た、NHKドラマの「阿修羅のごとく」(79 作:向田邦子/演出:和田勉)には驚きましたね。「これこそ僕が求めていたものかもしれない」と。
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監督/脚本:中野量太
1973年7月27日生まれ。京都育ち。
大学卒業後、日本映画学校(現:日本映画大学)に入学し3年間映画作りの面白さに浸る。2012年、自主長編映画『チチを撮りに』(12)を制作、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭にて日本人初の監督賞を受賞し、ベルリン国際映画祭を皮切りに各国の映画祭に招待され、国内外で14の賞に輝く。2016年、商業デビュー作『湯を沸かすほどの熱い愛』が、日本アカデミー賞・最優秀主演女優賞、最優秀助演女優賞など6部門受賞、国内映画賞で35冠、米アカデミー賞外国語映画部門の日本代表に選ばれる。2019年、初の原作モノとなる『長いお別れ』が、ロングランヒットに。2020年、『浅田家!』が、日本アカデミー賞・最優秀助演女優賞など8部門受賞。フランスで観客動員25万人を超えるヒットに。独自の感性と視点で、家族を描き続けている。
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『兄を持ち運べるサイズに』
TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
©2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会