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『星と月は天の穴』荒井晴彦監督 「こんな映画もあるんだよ」と抵抗したい【Director’s Interview Vol.532】

『星と月は天の穴』荒井晴彦監督 「こんな映画もあるんだよ」と抵抗したい【Director’s Interview Vol.532】

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モノローグ、回想、禁じ手オンパレード



Q:セックスシーンが物語を牽引していますが、具体的にどのように作っていかれるのでしょうか。動きや位置など、流れのプランを持って現場に臨まれるのでしょうか。


荒井:始まっちゃうとやっている役者に主導権が移るから、やる前に大体こういう感じってのは言うけどね。大きな流れで言えば最後は女が上になるんだろうと。その方がわかりやすい。矢添は30代の頃に奥さんに逃げられて、それが傷になってブランコがトラウマになっている。それからもう、女は道具として扱おうと決めているんだけれど、その道具にだんだん負けてくという話。


Q:矢添が欲情するきっかけとなる、旅館の隅の陰毛のかたまりにはこだわりがあったとか。


荒井:原作を読んだ時、一番印象的だったのはそこなの。横に女がいるのにあんまり反応しなくて、旅館の隅に掃き溜めみたいに絡み合った陰毛の固まりがあって、矢添はそれを見て「何十人もの男と女がここでやってきたんだな」と、それでやっと欲情する。その頃俺はまだ18歳だから女の人は知らないんだけどね。裸があれば即欲情するみたいなことではなく、もう一つ何かがいるのかなと。



『星と月は天の穴』©2025「星と月は天の穴」製作委員会


Q:矢添と紀子、千枝子などの現実の世界と、AとB子の小説の中の世界が並行して描かれます。描くにあたって世界の違いの見せ方は意識されましたか。


荒井:「こっちは小説の世界ですよ」と分かるように何か変えなくていいのかという意見はあったけどね。画面に字がいっぱい出てくるから、そこが一番心配だったね。小説をああいう風に字を画面に映して表現して、それがちゃんとハマっているのかどうか。


Q:音響は何か変えていましたか。


荒井:(小説内の部分は)セリフ以外は音無しにしている。音楽も無し。いわゆる日常音みたいなものは消している。小説の中の世界だから音はないでしょ。


Q:映画におけるモノローグは難しいと思うのですが、そこもハマっていました。


荒井:ナレーションとかモノローグとか、本当は禁じ手なわけですよ。学生に教えるときも、そういうのは説明だからやめろと。モノローグとかナレーションは、所詮説明だからね。回想シーンも同じで、なるべくやめろと教えているんだけど、今回は禁じ手オンパレード(笑)。教えていることと違うことをやっている(笑)。いわゆる映画的じゃないことをやっちゃっているのかな。だけど逆に、それが反転して映画的なんじゃないかとも思うんだけど。字を写すことに抵抗ある人はいっぱいいると思うんだよね。俺なんか脚本家だから「下手な演出よりも脚本を写せ!」と昔から怒っていたからね(笑)。





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