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『星と月は天の穴』荒井晴彦監督 「こんな映画もあるんだよ」と抵抗したい【Director’s Interview Vol.532】

『星と月は天の穴』荒井晴彦監督 「こんな映画もあるんだよ」と抵抗したい【Director’s Interview Vol.532】

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日本を代表する脚本家・荒井晴彦の監督最新作は、吉行淳之介による芸術選奨文部大臣賞受賞作品である『星と月は天の穴』。荒井自身、長い年の念願だった企画の映画化だ。過去の離婚経験から女を愛することを恐れる一方、愛されたい願望をこじらせる40代小説家の日常を、荒井得意のエロティシズムとペーソスを織り交ぜながら綴っている。


今の時代、日本映画で性愛を撮るとはどういうことなのか。一切の妥協を許さないモノクロのR18+作品に仕上がった本作だが、荒井晴彦はいかにして作り上げたのか。話を伺った。



『星と月は天の穴』あらすじ

小説家の矢添(綾野 剛)は、妻に逃げられ結婚に失敗して以来10年、独身のまま40代を迎えていた。心に空いた穴を埋めるように 娼婦・千枝子(田中麗奈)と時折り体を交え、妻に捨てられた過去を引きずりながらやり過ごしていた。そして彼には恋愛に尻込みするもう一つの理由があった。それは、誰にも知られたくない自身の“秘密”にコンプレックスを抱えているからだ。そんな矢添は、自身が執筆する恋愛小説の主人公に自分自身を投影することで「精神的な愛の可能性」を自問するように探求するのが日課だった。ところがある日、画廊で偶然出会った大学生の瀬川紀子(咲耶)と彼女の粗相をきっかけに奇妙な情事へと至り、矢添の日常と心が揺れ始める。



今回は動画版インタビューも公開! あわせてお楽しみください!



Index


なぜ1969年だったのか



Q:映画化が具体的に動き出したきっかけを教えてください。


荒井:2017年にMMJの清水真由美プロデューサーと進めていた企画の原作が取れなかった。

「じゃあ昔からやりたかったのがあるよ」って、この「星と月は天の穴」の話をした。宮城まり子さんに会いに行って「原作をください」と。そうしたら宮城さんは翌年の3月に亡くなったので、もうギリギリだったね。その後コロナになるのか。『花腐し』もそうだけど、コロナで全部ストップしちゃった。濃厚接触シーンが多いのでね(笑)。結局、綾野くんがやってくれることになって、それで動き出した。



『星と月は天の穴』©2025「星と月は天の穴」製作委員会


Q:舞台が1966年から1969年に変更されています。


荒井:最初は現在で書いてみたんだよ。そしたら全然ハマらないというか、浮いちゃうというか、セリフとか全部ね。今はコンプラとかうるさいじゃないですか。今、吉行をやること自体で顰蹙買うなと。


Q:69年という設定だと、そういう時代だったという前提ができると。


荒井:まぁね。『福田村事件』(23)をやったときも、ジェンダーがどうこうって言う人もいたからね。だって大正時代の村の話だよ(笑)。『福田村事件』のときもね、「こういう映画にどうしてロマンポルノみたいなシーンがあるんだ」って、ロマンポルノなんか観たことない人たちが「そういう性的なシーンは不要でしょう」と言ってくる。必要か不要かは作る俺たちが決めるんで、シロウトに言われたくねえよってね(笑)。でもそういう風潮になっているよね。だけど #MeTooが始まったアメリカでも、そういうシーンがあるべき映画をちゃんとやっているじゃないですか。しかも大物の女優さんたちがちゃんと裸になっているし。





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