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『黒の牛』蔦哲一朗監督 × 撮影監督:青木穣 5年かけたロケハン、天候待ちに1年、65ミリフィルムでの撮影、妥協なき映画作り【Director’s Interview Vol.534】

向かって左から撮影監督:青木穣氏、蔦哲一朗監督

『黒の牛』蔦哲一朗監督 × 撮影監督:青木穣 5年かけたロケハン、天候待ちに1年、65ミリフィルムでの撮影、妥協なき映画作り【Director’s Interview Vol.534】

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65ミリフィルムへのこだわり



Q:全編ほぼ白黒で撮影されていますが、白黒撮影へのこだわりについて教えてください。


青木:僕たちは16ミリの自家現像からスタートしました。大学時代に手作りのバケツや木の枠を使って、自分たちで現像していたのですが、それだと白黒現像しかできない。また、白黒フィルムの方が安かった。だから仕方なく白黒から始めたのですが、それが映像制作の原体験でした。白黒は僕たちの中では当たり前の表現になっているんです。毎回「今回はカラーにする?白黒にする?」となるのですが、今回も大きな議論はなく「白黒だよね」となりました。原点回帰の部分もあったと思います。


蔦:今回は“牛を撮る”という時点で白黒で撮りたいと思っていました。前作『祖谷物語 -おくのひと-』はカラーだったこともあり、次は白黒かなと。ただ、65ミリはそもそも白黒フィルムが作られていなかったので、必然的にカラーになりました。クリストファー・ノーランは『オッペンハイマー』(23)のために白黒の65ミリフィルムをコダックに作らせたそうですが。


青木:白黒の65ミリフィルムについて日本のコダックに問い合わせた際に、「ノーランが新作で白黒の65ミリフィルムを作ったらしい」という情報を聞いていました。それを譲ってもらえるという話にもなったのですが、でもそれは現像が出来ないんです。ノーランは現像機を改造して白黒現像を敢行したそうですが、さすがにそれはお金がかかりすぎる(笑)。



『黒の牛』©NIKO NIKO FILM / MOOLIN FILMS / CINEMA INUTILE / CINERIC CREATIVE / FOURIER FILMS


Q:一部シーンを65ミリフィルムで撮影した理由について教えてください。


青木:それまでのシーンと差を出したかったんです。白黒で4:3のスタンダードからカラーのシネスコに変わる際に、その差が大きければ大きいほど良かった。


蔦:35ミリから65ミリへの変化は、違う世界に行ったということ。「十牛図」は円環で描かれている世界で、一から始まって十で終わり、またすぐ一になる。それをこの映画では、ずっと同じところを回っている円ではなく、螺旋状に登っていくような円にしたかった。だからフィルムや色、画角による変化で、「違う十牛図に入った」という意味を出そうとしたんです。


Q:そもそも65ミリで撮影するカメラは日本に存在したのでしょうか。


青木:日本でも80〜90年代くらいまでは、万博の大型映像や全天周映像で使われた65ミリのカメラが存在していました。それを個人で所有してメンテナンスしているカメラマンがいて、その方に相談してお借りしました。


蔦:実はノーランにも助けを求めたんです(笑)。エージェントを通じて返事もいただきましたが、実際に借りるのは難しかったですね。


Q:色調整はフィルムタイミングで行われたのでしょうか。


青木:今回はグレーディングです。ノーランはタイミングでやっていますから、やっぱり1枚上手ですね(笑)。


蔦:完成版はデジタルですが、出来ればプリントを作りたい。映画がヒットしたらぜひ作りたいですね。





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