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『黒の牛』蔦哲一朗監督 × 撮影監督:青木穣 5年かけたロケハン、天候待ちに1年、65ミリフィルムでの撮影、妥協なき映画作り【Director’s Interview Vol.534】

向かって左から撮影監督:青木穣氏、蔦哲一朗監督

『黒の牛』蔦哲一朗監督 × 撮影監督:青木穣 5年かけたロケハン、天候待ちに1年、65ミリフィルムでの撮影、妥協なき映画作り【Director’s Interview Vol.534】

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一体いつの時代にどこで撮られたのか? 映画『黒の牛』を観るとそんな疑問を抱かざるを得ない。今の日本で撮影されたとは信じがたい、芳醇で圧倒的な世界がスクリーンを埋め尽す。禅に伝わる悟りまでの道程を⼗枚の⽜の絵で表した「⼗⽜図(じゅうぎゅうず)」から着想を得て作られた本作は、なんと8年の歳月をかけて作られた。全編フィルムで撮影され、しかも一部には65ミリフィルム*が使用されているという。


この驚くべき映像美はいかにして作られたのか。蔦哲一朗監督と撮影監督の青木穣氏の二人に話を伺った。


*撮影は「65ミリフィルムネガ」で、現像後のプリントに音声トラックが付加されると5mm増えて「70ミリ」となる。



『黒の牛』あらすじ

急速に変わりゆく時代。住む山を失い、放浪の旅を続けていた狩猟民の男(リー・カンション)は、山中で神々しい黒い牛(ふくよ)と邂逅する。男は抵抗する牛を力ずくで連れ帰り、人里離れた民家で共に暮らしはじめる。生きるために大地を耕しはじめた男と牛だったが、自然の猛威の前に、息を合わせることができない。しかし、ある禅僧(田中泯)との出会いをきっかけに、次第に心を通わせていく。


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脚本を一旦忘れ、プロットで進めた撮影



Q:本作は元々、京都で映画を撮る「京都映画企画市」のコンペで優秀作品を獲ったところから始まったそうですね。


蔦:「京都映画企画市」はもともとデモ映像を撮るまでを支援するコンペなんです。「優秀作品には350万円を支援するので、長編化するためのデモ映像を作ってください」というもの。僕も優秀作品に選ばれたので350万円でデモ映像を作りました。それはYouTubeにも上がっています。それを元に長編化のために資金集めをしていくのですが、それは自分たちでやらなければならない。そこからはプロデューサー的な動きが必要になってくるので、監督だけをやっている人には難しいかもしれません。僕も完成までは8年掛かりましたが、そのコンペでグランプリを獲った中では初めて長編化できた映画です。昨年までで18回ほど実施されていますが、他はまだ誰も完成していません。そこは課題でしょうね。


『黒の牛』パイロット版


Q:禅につたわる「十牛図」から着想を得たとのことですが、脚本はどのように作られたのでしょうか。


蔦:最初はビジュアル重視にしていたので、撮りたい絵を並べて、それを元にストーリーを作っていきました。今回の脚本に入っている久保寺晃一君と上田真之君と一緒に、一本のストーリーに仕上げたのですが、脚本にすると、この映画の魅力が薄まったように感じて…。そこで今回は思い切って脚本を一旦忘れ、「カット表」のようなものを元に撮っていこうと決めました。スタッフやキャストにはカットごとに内容を書いた「字コンテ」のようなプロットだけを渡して、撮影を進めることにしました。



『黒の牛』©NIKO NIKO FILM / MOOLIN FILMS / CINEMA INUTILE / CINERIC CREATIVE / FOURIER FILMS


Q:セリフもほとんどありませんが、キャストには役についてどのように伝えられたのでしょうか。


蔦:演じる役について大まかな説明はしています。その上で「今日はこのカットを撮ります」とスケジュールを伝え、現地に行ってから何をするかを決めていました。今回はワンシーン・ワンカットが基本だったので、焦ってカットをたくさん撮るのではなく、一日かけてじっくりとワンカットを撮るスタイル。現場は青木とも相談しながら進めましたが、事前に用意したビジュアルイメージやロケハンで「こう撮る」という想定は共有済みでした。一方で役者さんに関しては、アドリブが多かったですね。


Q:ロケハンの時点で撮影内容を決めていたと。


蔦:僕はロケハンが大好きなんです。ロケハンが映画の大きな要素だと思っています。





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