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『センチメンタル・バリュー』ヨアキム・トリアー監督 信頼し合える俳優たちとのコラボレーション【Director’s Interview Vol.538】

© 2025 MER FILM / EYE EYE PICTURES / LUMEN / MK PRODUCTIONS / ZENTROPA ENTERTAINMENTS5 APS / ZENTROPA SWEDEN AB / KOMPLIZEN FILM / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ARTE FRANCE CINÉMA / FILM I VÄST / OSLO FILM FUND / MEDIEFONDET ZEFYR / ZDF / ARTE

『センチメンタル・バリュー』ヨアキム・トリアー監督 信頼し合える俳優たちとのコラボレーション【Director’s Interview Vol.538】

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昨年、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞して以来、各国の賞レースを総なめにし、アカデミー賞でも有力候補のひとつと言われる、ヨアキム・トリアー監督の『センチメンタルー・バリュー』。『わたしは最悪。』(21)で組んだレナーテ・レインスヴェと再タッグ、彼女が演じる主人公の父親にはスウェーデンを代表する名優ステラン・スカルスガルド、アメリカからはエル・ファニングと、インターナショナルなキャスティングで、ある家族のこじれた関係を描く。


家を捨て、娘たちと長年疎遠だった映画監督の父・グスタフ(ステラン・スカルスガルド)が、母親の葬儀に姿を現す。いまは俳優となった長女・ノーラ(レナーテ・レインスヴェ)に父は、彼女のために書いた自伝的な作品の主人公を演じて欲しいと語る。父親を許せない彼女は拒否するが、ハリウッドの有名スター・レイチェル(エル・ファニング)が演じることになったと聞き、複雑な心境に陥る。


きめ細やかな演出、ミニマルでありながら行間に多くを示唆するアプローチ、素晴らしい俳優たちのアンサンブル、それだけでも見応えがあるが、本作にはさらに世代から世代へと受け継がれる歴史的なトラウマがあり、それがひとつの家族の物語を超えて大きな広がりを感じさせる。本作についてトリアー監督に訊いた。


※本記事は物語の結末に触れているため、映画未見の方はご注意ください。


Index


自伝的な要素



Q:本作は父と子の長年にわたる確執、というだけではなく、第二次世界大戦から現在に至る歴史の中でわたしたちが受けてきた集団的トラウマというものを扱っており、それが大きな広がりを感じさせます。あなたのお祖父様も映画監督ですが、本作に自伝的要素はありますか。


トリアー:たしかにあります。祖父が映画監督だったことは、わたしに大きな影響を与えています。第二次世界大戦以降、ノルウェーは平和ですが、大戦中は5年ほどナチの占領下にありました。祖父はレジスタンスだったので捕えられ、戦時中ワークキャンプで働いていました。彼が生き残ったのは奇跡に近いと思います。その後、彼はジャズ・ミュージシャンになり、それから映画を作り始めました。彼は生きていくために必要に駆られて映画を作り始めたのではないか。戦後はアクティビストになり、平和主義者でした。



『センチメンタル・バリュー』© 2025 MER FILM / EYE EYE PICTURES / LUMEN / MK PRODUCTIONS / ZENTROPA ENTERTAINMENTS5 APS / ZENTROPA SWEDEN AB / KOMPLIZEN FILM / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ARTE FRANCE CINÉMA / FILM I VÄST / OSLO FILM FUND / MEDIEFONDET ZEFYR / ZDF / ARTE


わたしには現在ふたりの子供がいますが、世界はとても複雑で、彼らにとって困難な場所です。この映画を共同脚本家のエスキル・フォクトと書きながら、わたしは自分の子供たちのことを考えていました。たとえ小さな家族の物語を描くにしても、子供たちにとって過去の歴史というものは消えるものではありません。ノーラと妹のアグネスは父グスタフをーー彼は戦後の第一世代でとても複雑な時代を生きていて、さらに戦争のトラウマを抱えた妻を持ち、それらが性格にも影響しているーーそんな父を、最終的には許し、受け入れます。わたしはずっと、戦争のトラウマというのはどの世代まで続くのかを自問していました。いつになったらわたしたちはそこから脱することができるのだろうと。自分の子供たちを見ながら、自分の世代でそれは終わるのか、それとも彼らの世代にもまだまだ影響が続くのか、そんなことを考えてしまうのです。


歴史の記憶には2面性があり、わたしたちはそれを受け継いでいくとともに、次の世代が新しい歴史を築いていくことにオープンでなければなりません。でもその影響は、個人レベルではさまざまに異なるものです。




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