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『まっすぐな首』空音央監督 思考や感情、身体感覚に正直でいたい【Director’s Interview Vol. 541】

『まっすぐな首』空音央監督 思考や感情、身体感覚に正直でいたい【Director’s Interview Vol. 541】

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社会から踏み出せないことへの危機感



Q:楢崎さんの原作には“身体性”というテーマが内包されていたのでしょうか。


空:原作となったグラフィックノベルは楢崎さんが展示のために描いたもので、展示場所が美術予備校だったこともあり、これから社会に出ていく人たちに向けたメッセージにしたかったそうです。社会に適応することによって、元々自由だった体が決まった方法でしか使えないようになってしまう。そんな人たちに向けて、「もっと自由に振る舞っていいんだよ」と。僕はそんなメッセージを受け取りました。


その原作が持つメッセージを元に、映画には僕個人の思いも織り込んでいきました。自分が数年前からパレスチナの連帯運動などに関わっていることもあり、今ガザで起きていることが、この世界のあらゆる場所と繋がっている現実が見えた。現代の生活を支える様々な仕組みやシステムが、結果的にいろんなところで暴力を生んでしまっている。例えば、私たちの年金が武器産業に投資されて、そのお金で作られた爆弾が子どもたちに降り注ぐ。 そして、それが再び映像として我々の手元のスマホに返ってきて、それを見ることになってしまっている。そういったことが何年も続くと、自分たちの体にどこかしら不調として出てくるのではないかと。その仮定を「首が曲がらない」という症状に置き換えてみたんです。


そうやって、楢崎さんのグラフィックノベルの解釈を土台に、自分自身の思いや安藤サクラさんと何日もかけて話し合ったことなど、様々な要素を織り込んで今の形になりました。



『まっすぐな首』(『ショート・パルス5つの鼓動』)


楢崎さんは子供の自殺率などのテーマを考えていたようで、原作には「社会に出ていくというゲームやサーカスに参加しなくてもいい、離脱してもいいんだよ」というメッセージも込められています。原作の最後にフレームの外に踏み出すシーンがあって、まさに「踏み出していいんだよ」と。 そこに、「ベルトコンベアのように流れていく社会から踏み出さないと、どうしても暴力に吸収されてしまう」という、僕の危機感を少し加えたかった。 


ただ、映画でそれをメッセージとして伝えたいということではなく、あくまでもインスピレーションの元として考えていました。


Q:安藤サクラさん扮する女性が転んで倒れた時に、声をかけてくる女性はパレスチナのスカーフを首に巻いていました。その辺も空監督の思いが入っているのでしょうか。


空:あのスカーフは演じた方の私物です。「撮影には好きな格好で来てください」とお願いしたら、あの格好で来られた。演じてくれた方は役者ではなく、普段は舞台の裏方の仕事をされていて、「この人だったら、倒れている人を見て立ち止まりそうだな」という思いからキャスティングした方でした。





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