人の内面を正確に捉え表現できるか
Q:撮影を映画監督の小田香さんが担当されていました。
空:小さな規模の映画なので、前提となる考えを深く共有できる人と仕事がしたかった。繊細な感情の機微を捉えるためには、前提が共有できていないと現場で何が起きているのか分からなくなってしまうんです。小田さんはそういったものを敏感に感じ取れる目を持っている人。また、安藤さんと信頼関係を築けることも不可欠でした。信頼がないと感情も溢れ出てこない。小田さんなら絶対に大丈夫だと確信していました。
Q:小田さんはご自身で監督される作品以外でもカメラを回されることがあるのですね。
空:最近だと『魂のきせき』(25)というドキュメンタリーや、Netflixの「マイ・ラブ:6つの愛の物語」(21)の日本編でも小田さんがカメラを回しています。 意外と他の監督の作品でも撮られているんです。

『まっすぐな首』(『ショート・パルス5つの鼓動』)
Q:“かさぶた”へのズームがとても印象的で、“かさぶた”が山や岩肌、焦土のようにも見えました。あれは実際に安藤さんの足につけたものを撮影されたのでしょうか。
空:“かさぶた”はメイクで作ってもらったのですが、本当にリアルに仕上げていただきました。 まさにおっしゃる通り、僕や編集者の永井愛華にはあれが「街の残骸」に見えたんです。 もちろん解釈は自由で、平原や山など色々な風景が見えてくると思いますが、そういった意図を持ってズームにしてみました。
Q:ミクロとマクロが切り替わっていく感じが面白かったです。
空:普段の自分の作品は客観的に物事を捉えることが多く、引いた画で被写界深度を深く設定し、全体にフォーカスを当てる手法をよく使っています。でも今回は完全に「内面」のお話なので、どれだけ人の内面を正確に捉え表現できるかを、自分自身の挑戦として課していました。だからこそ、内側に入っていくような感覚を大切にしつつ、同時にそれが広い世界と繋がっているという、主観と客観の境界線がない状態を作りたかった。
特に今は、世界中の出来事をスマホの画面で見てしまう時代。スマホを見ることはとてもプライベートで個人的な空間であると同時に、世界と繋がる客観的で無機質なものでもある。その両方の側面を作品に含めたかったんです。