感情が体に直結している、安藤サクラという俳優
Q:安藤さんとはどのようなことをお話しされたのでしょうか。
空:安藤さんも色々なニュースを気にかけていて、ご自身で情報収集されていました。彼女自身、様々な情報を知るための勉強会のようなものを開いたりして、パレスチナの問題を含め、世界で起きていることを深く受け止めているようでした。
安藤さんがお話しされているときに、うまく言葉では説明できずに自然と涙が溢れてくるような瞬間があったんです。意識や理屈では理解し得ないくらい辛いことを彼女は“体”で受けていて、それが涙となって表に出る。その姿を見た時、今回の作品にぴったりの方だと思いました。彼女には嘘がなく、感情が体に直結している。だからこそあんなに素晴らしい俳優なのだと納得しました。

『まっすぐな首』(『ショート・パルス5つの鼓動』)
Q:途中、よく見ると安藤さんが涙を流していますが、あれは演出されたのでしょうか。
空:あのシーンは、子どもを小学校に送った後、公園で一息ついている時にiPhoneをちらっと見るという設定で、「いつものようにiPhoneを見てください」とだけ伝えたんです。そうしたら自然と涙が流れていました。
安藤さんは本当に嘘がない方で、現場で起きているあらゆることに素直に反応するんです。スタッフやカメラマンの存在、撮影されているという行為そのもの、撮影中に人がパッと通り過ぎること、どこかから聞こえてくる幸せそうな子どもたちの声、そうした平穏な雰囲気と対比するような自身のスマホに表示されるもの、などなど、そういったことすべてに対して反応する。撮影という緊張感のあるシチュエーションの下で、それほど素直な反応ができるくらい、ご自身の心と体が一体になっているのでしょうね。
初めて会いに行った時も面白かったですね。遠くにいらっしゃったのですが、そこでバク転をされていて(笑)。本当に、常に何かしら体を動かしているんです。まるで赤ちゃんのように、体と感情と思考が一体になっている。安藤さんは常にそういう状態なのだと思います。
ですから、撮影されていることも、スタッフが見ていることも、自分が何かを演じているということも、すべて含み込んだ上で、そのすべてに反応している。これは、そう簡単にできることではありません。何かを演じる際は、どうしてもカメラの存在に気を取られたり、自分がどう見えているのかを気にしたり、セリフを覚えることなどに意識が向いてしまいがちなのですが、安藤さんにはそれが全くないのです。なかなか特殊な方だと思います。