向かって左より、プロデューサー:武中志門氏、監督:平田雄己氏、プロデューサー:天利英里子氏
映画『サマー・サークル ~夏の終わりに描く声~』ができるまで Vol.1【CINEMORE ACADEMY Vol.46】
原町無線塔との出会い
Q:エントリーしてから企画を提出するまでは、どれぐらいの時間があったのでしょうか。
武中:応募締め切りは9月30日でしたが、コンペを見つけたのが8月の末頃でした。
平田:結構ギリギリだった記憶がありますね。
武中:「福島の浜通りを舞台にする」という明確なお題がある中で、震災や原発事故といったテーマも考えましたが、僕らは3人とも福島に縁もゆかりもなく当事者でもありません。だったら、自分たちの目線で描ける福島・浜通りのモチーフを探そうと。そして2回目の打合せの時に、平田くんが「原町無線塔」を持ってきてくれたんです。
Q:あらすじからはSFの雰囲気も感じますが、その「原町無線塔」からどのように物語を着想されたのでしょうか。
平田:原町無線塔はかつて南相馬市の原町に実在した、高さ200メートルほどのコンクリート製の電波塔です。その特徴的なビジュアルに強く惹きつけられました。戦前に建てられた当時は世界で2番目に高い塔で、関東大震災の際にはいち早く情報を塔からアメリカに伝え、それが救助のきっかけになったという歴史もあります。地域の方々にとってはシンボルのような存在だったそうです。今は取り壊されていますが、この塔を通じてなら僕ら外部の人間でも福島という土地を描けるのではないかと。

『サマー・サークル ~夏の終わりに描く声~』平田雄己監督
Q:この塔は「福島県」というワードなどで検索して見つけたのでしょうか。
平田:どういうきっかけで探し出したのかあまり覚えていないのですが、本当に偶然出会った運命的なものでした。細く高く伸びている200メートルの塔の真っ白いビジュアルがすごくSF的で、3人で「SFの世界に出てきそうだね」と話していたんです。そこから、かつてあった原町無線塔が実は宇宙と交信していたのではないかと考え、その謎を追っていく中学生3人組の青春SF映画という形で企画を作っていきました。
武中:「原町無線塔」で検索すると写真が出てくるのですが、高い建物が周りにない中で圧倒的にデカい塔が一本だけ立っている。まるで円谷プロの特撮のようなビジュアルに心が踊りました。原町無線塔は「長波」の電波塔だったのですが「短波」が普及し出してからは使われなくなり、実際に使われていた期間は短かったそうです。それなのに60数年も建ち続けていた。実はその間に何か秘密裏に使われていたのではないか…、という妄想からSFに話が広がっていきました。
Q:“子供とSF”というと『E.T.』(82)や『ストレンジャー・シングス』(16~26)などが浮かびますが、実際に映画として作るとなると大作になりそうですね。
平田:企画段階ではワクワクして話が広がりましたが、ここからは、それを実現していく難しさにぶつかるのだろうと思います。
武中:『ストレンジャー・シングス』や「マーベル映画」のようなSFだと実現が難しいので、“日本でやるSF”とはどういうことかを考えています。
天利:誰もが一度は考える「これは宇宙人の仕業ではないか…」みたいなものを、絶妙な距離感で描きたいですね。