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『オールド・オーク』ケン・ローチ監督 相反する者たちも共鳴できる【Director’s Interview Vol.544】

© Sixteen Oak Limited, Why Not Productions, Goodfellas, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2023

『オールド・オーク』ケン・ローチ監督 相反する者たちも共鳴できる【Director’s Interview Vol.544】

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前作でやり残したことがあると感じた



Q:『わたしは、ダニエル・ブレイク』と『家族を想うとき』は決して楽観的とは言えない作品でしたが、今回は希望を感じさせます。それは前作の反動と言えるでしょうか。あるいは今の世の中にあえて希望を与える作品を作りたいという強い思いがありましたか。


ローチ:たしかにその2作品はとても辛い物語で、それゆえにわたしたちは何かやり残したことがあるような気持ちがしていました。それであらためて挑戦したいと思ったのです。絶望や未知への恐怖のなかで、相反する者のあいだにも何か共鳴できるものはあるのではないか。それを探りたかった。


結局のところ原因を辿ればすべて政治と経済に行き着くのです。わたしの世代、つまりマーガレット・サッチャー政権の時代に育った者は、彼女がいかに破壊的で悪質な存在だったかを知っています。彼女が生み出した社会は自己中心的なものだった。「わたしは自分の道を切り開く。他人のことは知らない。あなたはわたしの競争相手であり、あなたから利益を得られるならそうする」。これが彼女の哲学。何世代にもわたってそれが人々を苦しめ、労働組合を弱体化させ、ひいてはコミュニティを消滅させてきました。



『オールド・オーク』© Sixteen Oak Limited, Why Not Productions, Goodfellas, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2023


わたしが働き始めた頃は組合員証を持っていることは誇りでした。でもそうした連帯意識は破壊されてしまった。ただし今日の若者は、「それは違う」と感じ、声を上げ始めていると思います。


本作は言ってみれば、『わたしは、ダニエル・ブレイク』からの続きのようなものです。彼は病気で働けないのに国から働けと言われ、結局それが命取りとなる。どんなにひどい条件でも仕事を引き受けなければ飢え死にする。『家族を想うとき』では、労働条件は一層過酷になる。それはサッチャー政権以降、労働組合の力が失われていった結果です。そして本作では、組織化された労働者階級の力が失われたことが、町に大きな影を落とし、人々の心を曇らせてしまったのです。





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