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『オールド・オーク』ケン・ローチ監督 相反する者たちも共鳴できる【Director’s Interview Vol.544】

© Sixteen Oak Limited, Why Not Productions, Goodfellas, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2023

『オールド・オーク』ケン・ローチ監督 相反する者たちも共鳴できる【Director’s Interview Vol.544】

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※本記事は物語の核心に触れているため、映画未見の方はご注意ください。


今年6月に90歳を迎えるケン・ローチ監督。つねに庶民の目線で労働者や移民、搾取される立場の人々を描き、イギリスの良心と目される彼の新作が、『オールド・オーク』だ。カンヌで二度目のパルムドールを受賞した(一度目は『麦の穂をゆらす風』06)『わたしは、ダニエル・ブレイク』(16)と、『家族を想うとき』(19)に続く、イギリス北東部を舞台にした3部作の最終章にあたる本作は、炭鉱が閉鎖され廃れた町に、シリアからの移民が到着したことで、町に愛着を感じる住人たちとのあいだに軋轢が生じる。わずかな常連を相手に古びたパブを経営するオーナーは、カメラを携えた移民女性のひとりと親しくなり、なんとかふたつのコミュニティの共存を図ろうとする。前2作に比べ本作には、微かな希望が感じられることが大きな違いと言えるだろう。


今日、なぜこのような作風にしたかったのか。ローチ監督が、90年代からの強力なパートナーである脚本家のポール・ラヴァティとともに、取材に応じてくれた。



『オールド・オーク』あらすじ

イギリス北東部、とある炭鉱の町で唯一のパブ、「オールド・オーク」。活気溢れる時代から30年の時を経て、今は厳しい状況に陥っているが、町に住む人々にとっては最後の砦となる止まり木のような存在だ。店主のTJ・バランタインは、試行錯誤しながらなんとかパブを維持しているが、町がシリア難民を受け入れ始めたことで、パブは居場所を争う諍いの場になってしまう。先行きを危ぶむTJだったが、カメラを持ったシリアの女性ヤラと出会い、思いがけない友情を育むことになる。果たして、彼らは、互いを理解する方法を見つけられるのだろうかー?


Index


イギリス社会の縮図。炭鉱の町とパブ文化



Q:あなたはこれまでにも炭鉱の町や移民を描いてきましたが、移民が訪れる本作の舞台に再び炭鉱の街を取り上げた理由を教えてください。


ローチ:炭鉱の町には歴史があり、社会の縮図のような側面があるからです。炭鉱で働く多くの人々が住み、パブがあり、商店があり、労働者たちの福祉施設があり、教会がある。わたしたちの文明のあらゆる側面がそこに存在している。しかし炭鉱が閉鎖されるとすべてが崩壊します。仕事がなくなり、人々は去り、町は死に絶える。古い産業が衰退すると、そのコミュニティもまた滅びていく。


以前わたしとポールが鉱山の町を訪れたとき、そこで実際にとても安価な住宅に押し込められた難民が大勢いるのを目にしたことがあります。トラウマを抱えた人々が、また別のトラウマを持つコミュニティのなかにいるという状況でした。そこからわたしたちは、異なるコミュニティの者同士が隣り合わせに暮らした場合、互いに理解し合うことはできるか、何が互いを支え合うのかということを問いかける作品を作りたいと思ったのです。人々はそのような状況のなかでどう希望を見出すのか。表面的なものではなく、真に意味のある希望を見出すにはどうすればよいかというテーマについて掘り下げたいと思いました。



『オールド・オーク』© Sixteen Oak Limited, Why Not Productions, Goodfellas, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2023


Q:パブが舞台ですが、イギリスの労働者にとってパブはいわば教会のように、人々が交流する重要な場所と言えますか。


ラヴァティ:その通りです。たとえばフランスにはカフェ文化がありスペインにはバールがある。パブには独特の心地よさがあり、寒い日などはパブに入って一杯飲むと体が温まり、すべての不安が消え去るようなところがあると思います。


ローチ:人々がどこかで出会うという抽象的なアイディアはあっても、映画ではそれを具体的に特徴づける場が必要でした。それにパブは人々が長居をするので会話が生まれ、そこからコミュニティが発展する。歴史を振り変えればイギリス文化にとってパブはとても重要な存在です。





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