13年ぶりの長編監督作
Q:13年ぶりの長編監督作品となりますが、再びメガホンを取られたきっかけは何だったのでしょうか。
利重:実はこの企画、10年くらい前に一度動かしていたんです。当時は資金繰りやキャスティングのタイミングが合わずに流してしまったのですが、プロデューサーの中村高寛くんが「今の利重さんの映画が見たい」と背中を押してくれた。それが再始動のきっかけです。
もう一度原点に立ち返り、8ミリフィルム時代のように最初から最後まで自分で作り上げる、「手作り」の過程を見守ってみようと思いました。また、プライベートでは母の介護が一段落し、精神的にも時間的にも長編映画にじっくり向き合えるモードになれた。そのタイミングも大きかったですね。

『ラプソディ・ラプソディ』(c)2026 利重 剛
Q:「いつの間にか結婚していた」というアイデアも、以前から温めていたのでしょうか。
利重:それはもう20年くらい前の冗談のような発想からです。結婚って大きな決心が必要なはずなのに、役所に婚姻届を出す瞬間は驚くほどあっけない。お祝いや記念品があるわけでもなく、淡々と受理される。保証人も「誰でもいい」なんて言われると、「その辺で出会った人でもいいの?」と思ってしまう。そんな「その気になれば誰とでも結婚できてしまう」という不思議な感覚を、プロットとして起こしていたんです。
僕は長い時間をかけて映画にしていくタイプで、以前撮った『クロエ』(01)も、高校時代に読んだボリス・ヴィアンの「日々の泡」を何十年もかけて映画化しました。今回の作品でも、昔の脚本を今読み返してみたのですが、自分の中での解釈が全く違っていて面白かったですね。昔ならもっとドタバタしたスラップスティックなものになっていたでしょうし、主人公の年齢も30代だったと思います。でも今の時代は、40代後半くらいの人が「なぜ結婚しないのか」と問われる設定のほうが分かりやすい。自分で書いたはずの脚本を、あたかも他人が書いたもののように今の自分が新しく解釈して作っていく。不思議と楽しかったですね。